2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of three dimensional graphene based high sensitivity gas sensor
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18K14174
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 良一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90700170)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / ガスセンサー / 多孔質 / 酸化還元グラフェン / ガス吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸着分子と表面との界面で引き起こす電荷移動を応答電流の差として検出するガスセンサーは電流値が急激に変化するディラックコーン型電子状態密度を持つグラフェンを有利であり、分子吸着による変化の高感度検出や吸着分子の選択性は吸着分子とグラフェン表面の吸着エネルギーを制御する必要がある。このような背景を下に平成30年度は2次元グラフェンの特性を良く引き継いだ立体的な多孔質構造を持つグラフェンに窒素や燐を化学ドープした試料やグラフェンの格子にナノサイズの穴を空けて化学ドープした試料を作製した。分子吸着エネルギーの制御したグラフェンをそれぞれ別々にガスセンシング部位とし高感度化に向けてガス吸着が試験できるセルと実験系の構築を行った。穴がなく化学ドープされていない多孔質グラフェン、化学ドープを施した多孔質グラフェンと化学ドープを施しかつ穴を空けて欠陥構造を増大させた多孔質グラフェンをガスセンシング部位とし無極性である水素分子を用いてガス吸着実験を行ったところ、水素ガス体積濃度500 ppmであっても抵抗値の変化量が0.05%以下であった。抵抗値の変化量を増大させる(高感度化)ために大きな抵抗値変化が見込める酸化還元などの処理を施したグラフェンでガス吸着試験する必要性が生じた。ハンマー法によって酸化したグラフェンを熱還元することによって酸化還元グラフェンは作製した。熱還元時間を変えた試料の抵抗値の変化量を測定したところ、水素ガス体積濃度500 ppmで0.5%程度の変化を示すことが明らかとなった。このように酸化還元処理を施すことで同一の条件下で無極性可燃性分子の物理吸着の感度を10倍以上向上させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、ガス吸着セルおよび複数台のマスフローコントローラーを接続したガス吸着セットアップの構築を終えた。これらのガス吸着実験装置に化学ドープを施した多孔質構造を持つおよび多孔質構造を持つ穴の空いたグラフェンを導入し、擬似四法で電気抵抗を測定した。高純度水素ガスを高純度アルゴンで希釈してガス吸着系に導入したところ、気流下の電気抵抗変化量が非常に乏しかった。これらの結果を受けて抵抗値の変化量を増大させるために試料の改善を試みた。様々なタイプのグラフェン試料を作製しガス吸着実験を行ったところ、立体的な多孔質構造を持つ酸化還元グラフェンは上記の変化量の乏しい試料と比べて10倍以上変化量を増大させることが明らかとなった。水素は無極性分子で極性分子よりも物理吸着が非常に弱いことを考えると、もう少し抵抗値の変化量を増大させなければならないが、抵抗値の変化量を水素ガス体積濃度1 ppmから1000 ppmの間で対数プロットをすると概ね直線的な変化を取っており、水素ガス体積濃度と抵抗値変化(%)は良い応答性を示している。また、抵抗値変化は微量であるが水素ガス体積濃度0.1 ppm程度までガス吸着による抵抗値変化が検出できている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記の立体的な多孔質構造を持つ酸化還元グラフェンのグラフェン格子にナノサイズの穴を空け化学ドープを施すことにより、更なる高感度化を目指す。また、導入するガス種を変更し化学ドープにより吸着分子の選択性が向上するか取り組む予定である。平成31年度は、 ①グラフェン格子にナノサイズの穴を空けて化学ドープを施した立体的な多孔質構造を持つ酸化還元グラフェンの作製 ②上記の多孔質構造を持つ酸化還元グラフェンを用いたガス吸着の高感度化と選択性の検討 について重点的に研究を行う予定である。 ①グラフェン格子にナノサイズの穴を空けて化学ドープを施した立体的な多孔質構造を持つ酸化還元グラフェンの作製については平成30年度ですでに穴を空ける方法を確立していることから、穴の空いた化学ドープグラフェン試料に対して酸化還元処理を施すことで穴の空いた化学ドープ酸化還元グラフェン試料を作製する予定である。②①で作製した酸化還元グラフェンを平成30年度で構築したガス吸着セルとガス吸着セットアップを用いて平成30年度と同様の方法で水素分子の吸着測定を行い、抵抗値の変化量から高感度化に貢献している条件を検討する。また、第一原理計算を用いて吸着メカニズムも検討を行う。さらに、ガス種を水素から酸素、アンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素などに変更し、同様の手法を用いて吸着分子の選択性について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本助成は若手研究における独立基盤形成支援(試行)に採択され、年度の途中で直接経費150万円および間接経費100万円が支給された。新しい試みである独立基盤形成支援(試行)予算の支給時の説明ではこれら250万円は平成30年度使い切りという説明を受けたため、平成30年度の本来の配分である200万円を使用せず独立基盤形成支援(試行)予算の執行をした。独立基盤形成支援(試行)予算は本研究基盤を形成するのに十分な金額であったため、使用額と使用計画の変更を行った。 次年度ではこれらの予算はガスセンサーの更なる高感度化を検討するためにマスフローコントローラーの増設及び計算化学によるガスセンサーの理解のため大規模計算機使用料に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Lithium intercalation into bilayer graphene2019
Author(s)
Ji Kemeng、Han Jiuhui、Hirata Akihiko、Fujita Takeshi、Shen Yuhao、Ning Shoucong、Liu Pan、Kashani Hamzeh、Tian Yuan、Ito Yoshikazu、Fujita Jun-ichi、Oyama Yutaka
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 10
Pages: 275
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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