2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of total internal reflection transient grating system to monitor ion pump dynamics of rhodopsin in a lipid bilayer
Project/Area Number |
18K14175
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 正人 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20611221)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ロドプシン / 脂質二重膜 / 拡散 / 界面 / 過渡回折格子法 / 全内部反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜タンパク質の構造変化や分子間反応を、生理条件に近い環境で観測できる新しい実験手法を開発する。その実現に向けた第一歩として、全反射プローブ方式の過渡回折格子(TG)装置を構築した。その試作には、課題申請の直後より取り組み、本年度開始時までに到達した。本年度は、まず、この試作装置の試料部を改善した。試作装置では、石英台形プリズムを通して、プリズムと試料溶液の界面に、全反射条件を満たすようにプローブ光を入射し、界面近傍からのTG信号を検出している。この際、試料部には、装置に保持したままで試料溶液を交換できるプリズムセルを試作して用いた。しかし、想定していた以上に光軸調整が難しく、このセルを用いただけでは全反射TG信号は検出できず、信号を検出するには光軸調整専用の別のセルに取り換えて調整する必要があった。このため、実際に試料の測定を開始するまでに長い時間を要する問題があった。解決のため、一つのプリズムセルに、光軸調整用の試料部分と試料用の部分の二つを分けて組み込んだセパレート型セルを新たに設計し作製した。このセルを並進ステージに載せ、装置の試料部に設置した。セルの光軸調整用の部分で全反射TG信号を検出した後、試料用の部分に並進ステージで切り替えることが可能となり、試料の測定開始までに要する時間を大幅に短縮することができた。 次に、本装置を用い、石英プリズムと水溶液界面の基板支持脂質二重膜中のスチルベンの系のTG測定を行った。その結果、そのTG信号を得ることができた。膜の系のTG測定は、従来の透過配置では試料からの散乱光が問題となり、実現されてこなかった。TG法の最大の利点は、拡散係数を高感度・高時間分解能で決定できることである。今回、全反射配置の採用により、この手法の適用範囲を膜の系にまで拡張でき、拡散という分子の動きの観点から、膜の構造に迫れる可能性を示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の到達目標は、全反射プローブ方式の過渡回折格子(TG)装置の構築を行い、脂質二重膜中でのロドプシンの構造変化やイオン輸送過程の時間分解検出を実現させることである。まず装置の構築を2018年度の主な計画としていた。成果の項目で述べたように、現段階で、実用に耐えうる装置の構築まで到達した。課題開始時までに、装置の試作まで到達していたが、この試作装置では光軸調整だけでほぼ丸一日を要し、試料の測定開始までには非常に長い時間がかかる状況であった。本年度前半に、光軸調整用参照試料部と試料溶液部の二つの部分を有するセパレート型のプリズムセルを新たに設計し、これを導入することで、測定開始までにかかる時間を大幅に短縮できた。 本年度後半は、試料の準備方法の検討と脂質膜中のスチルベンのTG測定を行った。脂質二重膜中のロドプシン測定のためには、このセルのプリズム上に基板支持脂質二重膜を準備する必要がある。この際、光軸調整を終えた後には、セルを装置から取り外すことなく膜試料を準備することが望ましい。ベシクルフュージョン法に基づいた準備方法を検討した。この際の試料には、リン脂質二重膜にスチルベンを導入した系を用いた。準備した試料について、全反射TG測定を行った。その結果、そのTG信号を得ることができた。現在は、膜試料の準備についての静置の時間や温度などの実験条件を検討し、再現性のよいTG信号が取得されつつある。以上のように、2019年度に計画しているロドプシンの系の実験に向けて着実に進んでおり、ほぼ当初の計画通りの進展状況であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、リン脂質二重膜中のスチルベンの系の測定を通して、全反射TG信号の再現性の向上に取り組む。TG信号の消失過程を解析すると、膜中でのスチルベンの拡散係数を決定できる。だが、当然ながら、消失過程を反映した信号成分はその強度が低いため、試料からの散乱光による妨害を受けやすい。具体的には、散乱光とTG信号の干渉成分が影響して、信号の減衰速度を変えてしまい、拡散係数の決定を困難にする。解決のため、TG信号の光路に精密ピンホールを設置し、その配置を工夫することで散乱光の妨害を極力減らす。また、いくつかの格子波数の条件で全反射TG信号を取得し、リン脂質中でのスチルベンの分子拡散係数を明らかにする。これをもとに、膜の構造状態についての議論を展開する。 次に、ロドプシンの系の測定に取り組む。球状脂質二重膜中のロドプシン試料は準備済みである。2018年度に検討したベシクルフュージョン法に基づく準備方法で、この試料をプリズム上に展開した基板支持二重膜試料を作製し、TG信号を測定する。TG信号の検出ができたなら、格子波数を変えて測定を行い、膜中のロドプシンの光反応や拡散のダイナミクスを明らかにする。これをもとに、膜中のロドプシンの構造変化やイオン輸送過程を捉えるという到達目標の達成を目指す。もし、信号強度が検出レベルに達していないという問題が生じた場合は、到達目標を膜中のロドプシンに由来するTG信号を取得することに切り替える。より多層の膜をプリズム上に展開して試料密度を増大させる、励起光やプローブ光の強度を高める、プローブ光の波長をロドプシンの吸収波長に近づける、など、信号強度を増大する工夫を行い、この目標に到達することを目指す。
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Causes of Carryover |
申請時点での使用計画では、励起レーザー光源の購入に充てることを予定していたため、本年度に多めの額を申請した。しかし、新しいプリズムセルの作製や光軸調整のための微動並進ステージの導入など、試作の装置を改善するための部品を多く必要としたことから、プローブレーザー光源の購入を軸とした使用計画へと変更した。この際、もともとの励起レーザー購入を想定した額には届かず、次年度使用額が生じた。 励起レーザー光源を他の実験装置と共有している状況は、現在も申請時と変わっていない。実験効率の向上のため、励起レーザー光を他の実験装置に用いた後、本装置で用いる際に、再現性よく光路を戻すための光学部品および機器(誘電体コーティングミラー数枚、フリッパーマウント、微動並進ステージなど)を購入したいと考えている。また、膜試料準備のための実験器具の購入も必要である。以上のように、次年度使用額を有効に使用させて頂きたい。
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Research Products
(5 results)