2020 Fiscal Year Research-status Report
単結晶氷Ih表面における局所的プロトン秩序化機構の解明
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18K14176
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野嶋 優妃 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90756404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 氷表面 / 和周波発生分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度から2019年度にかけて埼玉大学山口研究室在籍時に得られた結果をまとめた論文が,Chemical Communication(Chem. Commun., 2020, 56, 4563)に掲載された.2020年度はこの内容を含めた研究結果についてPacifichem 2020において招待講演を行う予定であった("Water related interfaces investigated with heterodyne-detected sum frequency generation spectroscopy", Yuki Nojima, Shoichi Yamaguchi)が,学会が2021年に延期されたため発表を行わなかった.延期された学会において引き続き同じ題目で講演を行う予定である.
2020年度は埼玉大学から筑波大学へと異動したが,4月中旬から6月中旬まで新型コロナウイルス感染症対策のため,研究室に入室することができず,その期間実験を行うことができなかった.また,登校再開後も分光測定に用いるレーザー光源の出力が測定ができなくなるほど低下し,レーザー励起ダイオードを交換する必要が生じた.レーザーダイオード交換後も,測定に十分な出力を得られないことが続き,研究を進めることができなかった.2021年になり,測定に十分なレーザー出力を得ることができるようになったので,2021年度に表面に電荷を持つ脂質膜を有する氷表面の分光測定に取り組む予定である.表面に脂質単分子膜を有する氷表面の和周波発生(SFG)分光を行うにあたり,まずは凝固点付近での脂質単分子膜/水界面の水分子の配向について調べ,室温での結果と比較する.さらに過冷却状態での測定も試みて,最終的に氷表面の測定を可能とすることを目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
所属機関を異動してすぐのタイミングで,新型コロナウイルス感染症対策のため研究室に入室できなくなった.そのため,2020年4月中旬から6月中旬まで実験を行うことができなかった.登校できなかった間に,分光測定に必須であるレーザー光源の出力が大幅に低下し,そのままでは測定を行うのが困難な状態になった.この問題を解決するために,励起レーザーダイオードを交換したが,交換後も分光測定に用いるレーザー光の出力が十分でない状態が頻発し,思うように研究を進めることができなかった.2021年になり,測定に用いるレーザー光の出力が十分に得られる状態を維持できるようになってきたので,2021年度は電荷を持つ脂質膜を表面に有する氷表面の分光測定に取り組む予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
電荷を持つ脂質膜を表面に有する氷表面の和周波発生(SFG)分光測定を行うために,まず脂質単分子膜/水界面のSFG分光の温度変化測定を行う.室温から界面の温度を下げていき,水の凝固点付近の温度における界面の水分子の配向について調べる.そのままゆっくりと界面の温度を下げることで,過冷却状態の界面の水分子の配向についても調べ,過去に測定した室温における水分子の配向と比較する.所属研究室には温度可変セルがあるので,そのセルの冷媒を変更するなどして,温度変化測定に取り組む予定である.
温度可変セルで脂質単分子膜/水界面をただ冷却するだけでは,表面が白濁した氷が生成されると予想される.我々が行うSFG分光では,氷表面に反射された信号光を検出するので,表面が白濁していると光が散乱されてしまい,信号を検出できないと考えられる.そのため,透明な氷を生成する必要がある.ニートな単結晶の氷の生成に用いたGriggs-Coles法を脂質単分子膜/水界面に適用することで,透明な氷を得ることを試みる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策で登校できない期間が生じたことと,分光測定に必須であるレーザー光源の不調が続いたため,研究の進展が大幅に遅れているため,昨年度は予算を使用しなかった.2021年度は温度可変セルに組み込むチラーと水の凝固点以下にすることができる冷媒,親水基に電荷を持つ脂質,表面に脂質単分子膜を有する透明な氷の作成に用いる特注のガラス容器などを購入する.現在所属している研究室ではこれまでに氷の分光測定を行ったことがないので,氷の作成や加工に使用する冷凍庫,ヒーター,断熱材,熱電対なども購入する必要がある.また,Pacifichem2021において講演を行う予定があるので,学会参加費や旅費が必要である.
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