2021 Fiscal Year Annual Research Report
Hydrogen order at ice Ih surface and its mechanism studied by nonlinear optical spectroscopy
Project/Area Number |
18K14176
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野嶋 優妃 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90756404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 氷表面 / 和周波発生分光 / ヘテロダイン検出 / プロトン配向 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,親水基に電荷を持つ脂質の単分子膜を氷表面に形成し,その表面にヘテロダイン検出和周波発生(HD-VSFG)分光を適用することを目指して研究を行った.脂質単分子膜を形成するために,水面に脂質単分子膜を形成する方法と同様に,脂質/クロロホルム溶液を液体窒素で冷却した氷表面に滴下した.しかし,氷表面でクロロホルムが凝固してしまい,脂質単分子膜を形成できなかった.氷表面に均一な脂質単分子膜を形成するためには,氷表面の温度をより高くする必要があると考え,0 ℃以上の水面にあらかじめ脂質単分子膜を形成し,水温を徐々に下げていく方法を試した.その結果,過冷却水表面に脂質単分子膜を形成することはできたが,水が凝固すると表面が湾曲してしまい,入射光や信号光が散乱されてしまったため,分光測定を行うことはできなかった.過冷却水表面に脂質単分子膜を形成し,HD-VSFG分光測定を行ったところ,水温が-2 ℃から-4 ℃に変化する際に,水素結合した水のOH伸縮振動に由来するSFG信号強度が増大した.この信号の増大は,空気/過冷却水界面における水分子の配向秩序が高くなったことを示唆している.空気/過冷却水界面では,ある温度を境に局所的な結晶化が進行し,その過程がSFG信号に反映された可能性がある.過冷却水表面に形成した脂質単分子膜についての測定は研究期間終了後も継続し,再現性や脂質の違いなどについても調べていく予定である. これまで空気/氷界面において水分子はランダムな配向をしていると考えられてきたが,本研究によって氷最表面近傍では水素原子を空気側に突き出すように配向する水分子がより多く存在するという,新たな知見を提供することができた.また,過冷却水表面に存在する脂質単分子膜というユニークな系についても測定を行い,興味深い結果を得ることができた.
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