2018 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of clock proteins focusing on cooperation of spatio-temporal dynamics
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18K14185
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
甲田 信一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10790404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 体内時計 / 概日リズム / シアノバクテリア / ATP加水分解 / 反応モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアの概日リズムは3種のタンパク質KaiA, KaiB, KaiCによって制御されている。
その概日リズムは、KaiC中で生じるATP加水分解から得られるエネルギーで駆動される。しかしこのATP加水分解の活性はモータータンパク質等と比較すると異常に小さい。この点、KaiCのATP加水分解活性が小さい理由、また、活性の小ささの時計機能発現における意義などは未だに明らかになっていない。そこで、量子化学計算を部分的に用いる分子動力学シミュレーション(QM/MM法)を用いてKaiC中のATP加水分解の分子機構を解明することを目指した。本年度は計算を通じてKaiC特有の構造に起因する加水分解の阻害要因を見出した。ここではKaiCの動的な構造揺らぎがATP加水分解を制御していることが示唆された。これはタンパク質の柔軟さが本質的にその機能発現に働いていることを示唆するものである。現在はさらなる詳細なデータを収集しており今後の発表に備えている。
また一方で、上記の概日リズムに関し、ミクロな素過程の組み合わせから生体機能が発現する機構を理解することを目指し、断片的に積み重ねられてきた各種の実験事実を統合した反応モデル(反応速度式のセット)を構築した。特に本年度は、反応速度定数や平衡定数にアレニウス型の温度依存性を導入した。そして、各種の実験結果を再現できるようパラメータの最適化を行った結果、多くの実験結果を定量的に良く再現できた。そして、そのモデルを利用した解析を通じ、体内時計の最も重要な性質である周期の温度補償性(温度非依存性)のメカニズムを、KaiC中のATP加水分解反応及びKaiCの各種構造変化と関連付けて提案することに成功した。この結果は現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時計タンパク質KaiC中で生じるATP加水分解の活性はモータータンパク質等と比較すると異常に小さい。そこで、KaiCのATP加水分解活性が小さい理由、また、活性の小ささの時計機能発現における意義を明らかにすべく、量子化学計算を部分的に用いる分子動力学シミュレーション(QM/MM法)を用いてKaiC中のATP加水分解の分子機構を解明することを目指した(課題1)。本年度は計算を通じてKaiC特有の構造に起因する加水分解の阻害要因を見出した。ここではKaiCの動的な構造揺らぎがATP加水分解を制御していることが示唆された。これはタンパク質の柔軟さが本質的にその機能発現に働いていることを示唆するものである。今後さらなる詳細なデータを収集することでそれを明示することができると考えられ、課題は順調に進展している。
また一方で、上記の概日リズムに関し、ミクロな素過程の組み合わせから生体機能が発現する機構を理解することを目指し、断片的に積み重ねられてきた各種の実験事実を統合した反応モデル(反応速度式のセット)を構築した(課題2)。特に本年度は、反応速度定数や平衡定数にアレニウス型の温度依存性を導入した。そして、各種の実験結果を再現できるようパラメータの最適化を行った結果、多くの実験結果を定量的に良く再現できた。そして、そのモデルを利用した解析を通じ、体内時計の最も重要な性質である周期の温度補償性(温度非依存性)のメカニズムを、KaiC中のATP加水分解反応及びKaiCの各種構造変化と関連付けて提案することに成功した。この結果は現在投稿中であり、課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ATP加水分解の分子的機構の解明のためには更なるデータが必要であるため、現在行っているシミュレーションを更に進める。また、得られたスナップショット的なデータをつなぎ、反応過程の概要を明らかにするための解析を進める。例えば、最小エネルギー経路および繊維状態を探索する。更に同様の計算をATP加水分解活性の異なる変異体でも行い、結果を比較する。
反応モデルによる機能発現機構の解明に関しては、構築したモデルを用いて、温度の周期変動を与えたときに時計がそれに追随する現象のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた計算機の購入は適当な商品を見出すことができなかったため来年度に持ち越すことにした。また、来年度は研究成果の発表のための旅費にも使用する予定である。
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Research Products
(1 results)