2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of clock proteins focusing on cooperation of spatio-temporal dynamics
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18K14185
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
甲田 信一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10790404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体内時計 / 概日リズム / シアノバクテリア / 反応モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアの3種のタンパク質KaiA, KaiB, KaiCは現在知られている中で最も小さい生物時計を構成する。その単純さゆえに、概日リズムの分子的起源解明を目的とした研究が行われ、多くの基礎的な過程(ATPの化学反応、タンパク質の構造変化、タンパク質間の複合体形成)が明らかにされてきた。しかし、それらの過程がいかに組み合わさって時計の機能を生み出しているかは詳しくわかっていない。 本年度は特に24時間という長時間の周期が生じる機構に焦点を当てて研究を行った。これまでの実験研究によりKaiBとKaiCの結合速度の遅さが長周期実現の大きな要因であることがわかっている。ではこの結合がゆっくり進む原因は何か。この点、KaiBの構造変化が遅いからであろうという実験研究が2015年にScience誌で発表された。一方、KaiBではなくKaiCの構造変化が遅いことこそが結合の遅さの起源であると他の研究グループが2018年に別の実験を通じて示した。では前者の実験結果は何を意味していたのか。そこで我々は前者の論文とは異なる結合機構を提案し、それによりKaiBの構造変化の遅さを仮定することなく前者の実験結果を説明できることを理論的に示した。結果として、KaiB-KaiC結合の遅さの起源がKaiC側に存在するという後者の実験結果が正しいことを立証し、KaiB間相互作用が本質的に重要な働きをしているという知見を得ることなった。なおこの結果はScientific Reports誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミクロな素過程の組み合わせから生体機能が発現する機構を理解することを目指し、断片的に積み重ねられてきた各種の実験事実を統合した反応モデル(反応速度式のセット)を構築した。それを用いて周期の温度補償性(弱依存性)の起源などを議論した論文を学術誌に投稿したが、複数の新規の主張を一度に組み込んだため、一つ一つの主張を十分に議論しきれず、結果として掲載は受理されなかった。 そこで方針を改めて個々の論点を個別に議論していくことにした。研究実績の概要に記したKaiB-KaiC結合の遅さの起源はそのひとつ目である。しかし、後続の論点を本年度中に論文化できなかったという意味では研究課題の進捗状況は当初の予定よりやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で記したとおり、進捗がやや遅れているため研究期間を1年延長する。今後は、KaiB-KaiC結合の制御の速度論、KaiCのドメイン間の情報伝達機構を個別に論じる。そして、それらの結果を統合したKaiABC振動子全体の反応モデルを用いて、周期の温度補償性などの時計の機能の起源を改めて議論する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ渦により旅費を使用しなかった。また、論文掲載に遅れが出たことで論文掲載料なども予定より使用額が少なくなった。次年度は複数の論文投稿を予定しており、その掲載料などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)