2019 Fiscal Year Research-status Report
エラストマーを利用した超分子集合体の力学的制御と力学的刺激応答性材料への応用
Project/Area Number |
18K14187
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
雨森 翔悟 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 助教 (80736736)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超分子 / エラストマー / 刺激応答性 / 電荷移動錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、力学的刺激に応答してその発光特性や色調が変化する力学的刺激応答性材料の開発が盛んに行われており、力学現象の可視化等への応用が期待されている。本研究では新しいメカニズムによる力学的刺激応答材料の開発を目指し、エラストマーに溶解した超分子集合体もしくは分子会合体を力学的刺激によって制御することを検討した。前年度にピレン誘導体とピロメリット酸誘導体による電荷移動錯体がポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーに溶解可能であること、その会合定数を定量的に評価可能であることを明らかとした。本年度は引張(力学的刺激)によって会合状態が変化可能な系を探索するために、エラストマーの架橋密度が溶解した電荷移動錯体の会合定数に及ぼす影響について評価を行った。 架橋密度の異なるPDMSエラストマーはビニル基を両末端に有するPDMSとTetrakis(dimethylsilyloxy)silaneとをPt触媒存在下ヒドロシリル化反応を行うことで得た。ここで異なる分子量のPDMSを用いることで架橋点間平均分子量の異なる3つのPDMSエラストマー(架橋点間平均分子量:34000, 5300, 1100 g/mol)の合成に成功した。会合定数の算出は得られたサンプルの可視吸収スペクトルを測定し、その電荷移動吸収帯の吸光度の低分子濃度依存性より算出した。結果として、今回用いた架橋密度の範囲において、会合定数に大きな違いはみられなかった。本研究結果は媒体のマクロな流動が抑制された環境や、硬さの異なる媒体中においても、液体中と同様に分子間の会合定数を議論できることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
架橋密度の異なるPDMSエラストマーの作成に成功し、それぞれの媒体中における電荷移動錯体の会合定数の算出に成功した。今回用いた電荷移動錯体の会合定数は架橋密度の影響を受けておらず、媒体のマクロな流動が抑制された環境中においても、液体中と同様に分子間の会合定数を議論できることが明らかとなった。このようなエラストマー媒体中における溶解した分子会合体の会合定数に関する議論はほとんど無く、力学的刺激応答とは異なるが、固体媒体中での分子会合の一端を示すことに成功した。
以上より本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
媒体の状態の違い(架橋密度等)によって、溶解した分子会合体の会合定数が異なる分子系は力学的刺激応答の発現に有利であると予想される。本年度は1:1を想定した分子会合体を用いていたため、今後は会合様式の異なる分子会合体や超分子集合体を用いることで、架橋密度によって会合状態の異なる系の探索を行う。会合定数の架橋密度依存性を示す系が見つかり次第、力学的刺激応答性の検討を行う。引張下における可視吸収スペクトルの測定装置は既に構築しており、直ちに力学的刺激応答性の評価が可能である。
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Research Products
(2 results)