2019 Fiscal Year Research-status Report
環状オリゴ糖を基盤とする光捕集アンテナの創製と人工光合成への応用
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18K14189
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
重光 孟 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00791815)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / 光捕集 / 円偏光発光 / 光触媒 / 有機色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は環状オリゴ糖であるシクロデキストリンに複数の有機色素を修飾した人工光捕集アンテナの創出を目的としている。さらに、それら『人工光捕集アンテナ』をホスト、『光機能性分子』をゲストとした『超分子複合体』を構築し、そのアンテナ効果や非線形光学効果についての研究を行う。本年度の研究成果について以下に列挙する。 ①昨年度に引き続き、種々の有機色素(多環式芳香族化合物や蛍光色素)を導入したシクロデキストリン誘導体(人工光捕集アンテナ)を複数種類合成した。今年度は、環サイズの異なるシクロデキストリンや色素団の自由度が異なる化合物の合成に成功した。 ②合成した人工光捕集アンテナの光物性評価を行い、優れた光吸収特性や円偏光発光(CPL)特性を示すことを明らかにした。合成した種々の光物性は、シクロデキストリン環サイズや剛直性にも依存していることが分かった。また、色素団の自由度の増加はCPL特性を減衰させることを明らかにした。さらに基底状態では色素団の相互作用は小さく、励起状態での色素団の相互作用がCPLの発現に重要であることを示すことに成功した。また、CPLはエキシマーを形成することが非常に重要であると考えていたが、色素間に相互作用があれば、モノマー発光由来でもCPLを示すことも明らかにした。 ③水溶性有機色素を利用することで、水溶性の人工光捕集アンテナを創出することに成功した。それらが細胞内でも機能して耐光性に優れていることを明らかにした。 ④色素が凝集状態となることで、光触媒機能が発現して有機溶媒中で活性酸素を発生させることを明らかにした。また、この光触媒活性もシクロデキストリン骨格の剛直性に依存することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光捕集アンテナとして機能する分子の合成および基礎的な光物性の調査は完了しつつある。現在は、光エネルギーを捕集するための分子を選定する最終段階に移行しており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目的としている光捕集分子システムを完成させるために、適切な相互作用や光吸収波長を有するゲスト分子を選定して、光捕集アンテナと混合する。光捕集アンテナと複合体を形成した場合には、エネルギー移動特性や非線形光学現象の有無について詳細な検討を行っていく。 また、光捕集アンテナのゲスト分子によるCPL特性の動的な変化についても検討を行っていく。特に、生体関連分子などを積極的にゲスト分子として用いてセンシング材料としての応用可能性を追求していく。さらに、それら動的挙動を生細胞内で実現することを目指す。細胞内でのCPL特性変化は、生体分子のキラルセンシングや多元的な情報処理を可能にするため、詳細な生体分子メカニズム解明へと繋がる可能性がある。これを目指して、光捕集アンテナを利用した細胞内超分子化学の開拓に挑戦する。
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Research Products
(3 results)