2018 Fiscal Year Research-status Report
長軸対称型双極性ピレン誘導体の系統的合成と生体深部観察用蛍光プローブへの応用
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18K14193
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
仁子 陽輔 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (20782056)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ピレン / 蛍光 / 二光子吸収 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、多環式芳香族化合物であるピレンに対し、長軸対称に電子ドナー・アクセプター基を配置した『双極性長軸対称ピレン誘導体』の系統的合成と、それら誘導体の光物理的性質の解明および生命科学への応用を目的としている。 本年度はまず、長軸対称ピレン誘導体への足掛かりとなる、ピレンの 1, 3-二置換体の合成に着手した。中でも、ビニルピリジニウム基を導入した 13PY と名付けた誘導体は、強力な赤色発光と二光子吸収性を示した。ユニークなこととして、同化合物の異性体(1, 6-二置換体)は生細胞のミトコンドリアを選択的に染色し、その後その場に局在しつづける性質を示したのに対し、13PYは細胞の活力、すなわちミトコンドリアの膜電位に応じて、その局在箇所をミトコンドリア⇔細胞核と可逆的に変化させる性質を示した。したがって、13PYは、ミトコンドリア膜電位のモニタリング能力を有する高輝度二光子励起発光性色素と捉えることができ、その成果は王立化学協会誌 Journal of Material Chemistry B に採択されている。 また本年度の間に、これまでに合成例のない 1, 3-ジブロモピレンの合成法を見出している。1, 6-ジブロモピレン(点対称)や 1, 8-ジブロモピレン(短軸対処)は販売されているにもかかわらず、1, 3-ジブロモピレンは全くの新規であることを考慮すると、これがいかに本研究課題の進展に重要なものであるかを推して知ることができる。今後は、この 1, 3-ジブロモピレンを出発原料として多彩な長軸対称ピレン誘導体の合成し、先述の目的を果たしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった『双極性長軸対称ピレン誘導体』の合成には至っていないが、その過程において種々のユニークな現象を発見し、成果とすることができた。また、同ピレン誘導体の系統的合成を実現する上で、最も重要な出発原料と考えられる 1, 3-ジブロモピレンの効率的合成を見出し、今後の研究を飛躍的に加速させることができると考えられる。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出した 1, 3-ジブロモピレンの効率的合成法を活かし、同化合物を原料とした『双極性長軸対称ピレン誘導体』の合成を行う。その後、同誘導体群の光物理的性質、特に二光子吸収性に注目し、次世代型レーザー光源「フェムト秒ファイバーレーザー」(1040 nm 発振)で高効率に励起できる、生体深部観測用の蛍光プローブの開発をしていきたい。それが予定通りに進行した場合は、同色素群をナノ粒子化し、超高輝度ナノプローブとしての応用も検討していきたい。
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Research Products
(5 results)