2018 Fiscal Year Research-status Report
ケイ素と芳香族炭化水素により構成される剛直ベルト状分子の創製と機能開拓
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18K14197
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
所 雄一郎 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (80709692)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機ケイ素化合物 / 芳香族炭化水素 / 環化反応 / シクロファン |
Outline of Annual Research Achievements |
ケイ素と多環芳香族炭化水素で構成されるベルト状分子を構築するための素反応として,既に研究代表者が予備的に発見していたルテニウム触媒による9-シリルアントラセンの二量化反応に着目し,触媒や反応基質の検討を行った。カルボニルジヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)を触媒とすることでケイ素上にフェニル基,メトキシフェニル基,tert-ブチルフェニル基を有する9-シリルアントラセン類の二量化が進行し,二枚のアントラセンと二つのケイ素で構成されるC2対称の剛直V字型分子が中程度の収率で得られた。V字型フラグメントを連結してベルト状とするために9,10-ジシリルアントラセンを基質として反応を行ったが,不溶物が得られ,解析や生成物の分離が困難であった。V字型分子はキラリティを有しており, V字型フラグメントを連結してベルト状分子を高収率で得るためには,V字型分子を立体選択的に合成する必要があると考え,不斉金属触媒について検討を行った。カチオン性のイリジウムやロジウム錯体と既知の単座または二座不斉ホスフィン配位子の組み合わせでスクリーニングを行ったが,現在のところV字型分子の収率が10%程度にとどまっている。そこで,9,10-ジシリルアントラセンに不斉補助基を導入することを考え,ジシリルアントラセンとキラルなビナフチル骨格を有するシクロファンを合成した。このシクロファンとルテニウム触媒で反応の検討を行ったが,反応はほとんど進行しなかった。しかしながら,このシクロファンは特異な分子間相互作用に基づく特徴的な熱物性や光物性を有することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケイ素と多環芳香族炭化水素で構成されるベルト状分子を合成するには至っていないが,その鍵となるシリルアントラセンの二量化反応の基質適用範囲等に関する知見を集めることができた。またベルト状分子の合成を検討する中で,予想していなかった相互作用や物性を示すシクロファンを合成することができた。特に得られたシクロファンの分子間相互作用は現在までにほとんど知られていない形式であり,新奇な物性や機能が期待できるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
ルテニウム触媒による9-シリルアントラセンの二量化反応の繰り返しによるベルト状分子の合成は困難であることが明らかになってきた。今後はハロゲン化されたV字型分子を合成し,パラジウム触媒によるカップリング反応等による環化を試みる。また,シクロパラフェニレン等の合成法を応用することも検討する。さらに,ジシリルアントラセンとキラルなビナフチル骨格を有するシクロファンの誘導体を合成し,反応性や物性の詳細な解明を進める。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも目的分子の合成が難航しており,小規模スケールでの合成検討が多かったため,試薬等の消耗品にかかる費用が低く抑えられた。次年度使用額は合成検討の高効率化のために用い,早期に目的分子合成を達成し,物性解明や機能開拓のフェーズに移ることを目指す。
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