2018 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリンとヘテロール双方の特性をあわせ持つ新規ポルフィリノイドの創製
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18K14198
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東野 智洋 京都大学, 工学研究科, 助教 (90711804)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポルフィリン / ホスホール / リン / チオフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
π共役分子はπ電子系による多様な性質を発現しうるため、近年ますます注目を集めている。その中でもポルフィリンとヘテロールは、どちらも機能性材料の開発において中心的な骨格として注目されているが、これらを組み合わせた系を構築する、という研究はほとんど検討されてこなかった。そこで本研究では、ポルフィリンとヘテロールを組み合わせ、双方の物性をあわせ持つ化合物の創製とその物性の解明を目的とし、検討を行った。 まず、スズ置換ホスホールとハロゲン化ポルフィリンとのクロスカップリング反応により、ホスホール架橋ポルフィリンダイマーの合成に成功した。これは、ポルフィリン周辺部にホスホールが連結された、世界で初めての化合物である。このホスホール架橋ポルフィリンダイマーは、チオフェンやベンゼンで架橋した化合物よりも大きな吸収スペクトル変化を与え、ホスホールを介した効果的なポルフィリン同士の相互作用を示した。加えて、ホスホールに由来した電子受容性の向上も見られ、ポルフィリンとホスホールの両方の特徴を有していると言える。 また、縮環ホスホール誘導体の合成検討を進めていくなかで、チオフェン縮環ベンゾジホスホールの合成に成功した。このチオフェン縮環ベンゾジホスホールは、クロスカップリング反応により様々な置換基を導入することができ、置換基によって様々な性質を示すことを明らかにした。近赤外領域における強い発光や、大きな二光子吸収断面積、さらには良好な電子移動度を示唆する結果が得られるなど、多方面での応用が期待できる分子であることを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、ホスホール連結ポルフィリンダイマーの合成に成功した。研究着手時点では反応がうまく進行しなかったが、スズ置換ホスホールを用いたクロスカップリング反応による合成スキームを確立することで、目的としていた分子を得ることができた。 また、新規縮環ホスホール誘導体の合成検討を進めていたところ、チオフェン縮環ベンゾジホスホールの合成に成功し、適切な置換基の導入によって様々な機能の発現が可能であることを見出した。この分子はポルフィリノイドではないが、多方面での応用が期待できる分子であることから、興味深い骨格として利用可能であると考えている。したがって、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で合成に成功した、ホスホール連結ポルフィリンダイマーを用いた金属錯体の合成検討を行う。また、ホスホール縮環ポルフィリンダイマーの合成法改良の実現に向けてさらに検討を進める。 加えて、本研究で見つかったチオフェン縮環ベンゾジホスホールを用いた、近赤外発光色素や電子輸送材料としての応用展開を目指し、分子設計と合成・機能発現を狙い検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、合成が比較的難しく、合成ルートの検討や反応条件のスクリーニングが必要と予想していたが、実際に目的としていた分子の合成に成功したため、物品費に余裕ができたことが理由として挙げられる。
本年度でも進める予定である化合物の合成や合成法の改良を行うための物品費、また各種測定のための消耗品の費用として使用する予定である。加えて、研究が着実に進展していることから、学会発表のための旅費としての使用を予定している。
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