2018 Fiscal Year Research-status Report
含高周期14族元素ジアニオン性8π電子系化合物の合成とその反芳香族性の解明
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18K14203
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
桑原 拓也 中央大学, 理工学部, 助教 (60768654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高周期14族元素 / 芳香族性 / 反芳香族性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は主にスズを骨格に含むジアニオン性七員環反芳香族化合物の合成を検討した。まずは、原料となるジフェニルジベンゾスタンネピンの合成を行った。次いで、ジフェニル体の還元反応を行った。Sn-Ph結合を過剰量のリチウムで還元的に切断した後、ヨードメタンでの捕捉実験を行った結果、対応するジメチル体を得たので、反応系中にはスズのジアニオン等価体が発生していることがわかった。さらに、このジアニオン種の7Li NMRを測定したところ、特徴的な低磁場領域にシグナルが観測された。これは、7Li核が反芳香族常磁性管電流の影響を受けていることを示唆する結果である。このジアニオン種の反芳香族性は、NICS計算によっても支持されている。 一方、還元剤であるリチウムを2当量に減らすことで、モノリチオ体の合成・単離にも成功した。これはシクロヘプタトリエニルアニオンの初めての単離例であり、その電子状態に興味がもたれる。各種NMR、X線結晶構造解析および理論計算の結果、負電荷はスズ上に局在化しており、モノリチオ体は非芳香族化合物であると結論づけた。 また、スタンナシクロヘプタトリエニル環のスズが四価ではなく、二価の状態のものの合成を試みたところ、自己四量化が進行し、テトラスタンナシクロブタンが得られた。X線結晶構造解析の結果、スズ4つから構成される四員環はほぼ平面構造をとっていることがわかった。この化合物を過剰量のアルカリ金属で還元することでもジアニオン性反芳香族化合物の生成を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では高周期14族元素を骨格に含むジアニオン性七員環反芳香族化合物の合成を目指している。初年度で目的化合物の生成を示唆する結果を得ており、それが反芳香族性を有することが理論・実験の両方から支持されたので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
生成が示唆されたジアニオン種の単離およびX線結晶構造解析を行い、これらの1H、7Li、13Cおよび119Sn NMRを測定することで、その反芳香族性に関する詳しい知見を得る。また、これまでは中心元素をスズに絞って研究を進めてきたが、今後はゲルマニウムやケイ素類縁体の合成にも着手し、重い七員環反芳香族化合物の化学を開拓していく。
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Causes of Carryover |
論文のオープンアクセス料金を「その他」として計上していたが、論文の作成・投稿に予定よりも時間がかかってしまい、その分が余ってしまった。
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Research Products
(5 results)