2018 Fiscal Year Research-status Report
求電子的なアプローチによる高選択的アリル位シアノ化反応の開発
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18K14217
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清川 謙介 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80632364)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホウ素 / アリルボラン / ニトリル / シアノ化 / 位置選択的反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
アリル金属種に代表されるアリル求核剤を用いる求電子的なシアノ化は、β,γ-不飽和ニトリル合成の有用な手法の一つになり得ると考えられ、特に γ位選択的な反応を確立できれば、従来合成が困難とされているブランチ型化合物の有力な合成手法となる。そこで、目的とするアリル位シアノ化を達成するために、 まずは用いるアリル金属種を選定した。先行研究であるホウ素エノラートの求電子的シアノ化(Angew. Chem. Int. Ed. 2016.)の結果を鑑み、アリル金属種の調製の容易さ、γ位選択的な反応性、ルイス酸性の金属中心によるシアノ化剤の活性化を考慮した結果、アリルボランを利用することとした。アリルボランはアレンもしくはジエンに対するヒドロホウ素化を用いて調製し、単離せずにそのままシアノ化へと適用する手法を採用した。種々のホウ素試薬を用いて検討した結果、求核性とホウ素中心のルイス酸性を兼ね備えた9-BBN由来のアリルボランに対して、シアノ化剤として入手容易なNCTSやTsCNを作用させた場合に、目的とするシアノ化が高効率かつγ位選択的に進行し、対応するβ,γ-不飽和ニトリルが得られることを見出した。さらに、反応剤の添加量、溶媒、温度、時間などの反応条件を精査することで、90%を超える高収率でで目的生成物を合成することに成功した。また、本手法を種々のアレンに対して適用して基質一般性を調査した結果、本反応が高い官能基許容性を示し、幅広い基質に対して適用可能であることが明らかとなった。さらに、合成したβ,γ-不飽和ニトリルのシアノ基を官能基変換することで、種々の有用化合物へと誘導化することに成功し、本反応の合成的有用性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アリルボランを活用することで、目的とする位置選択的なアリル位シアノ化反応を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
合成化学的には安定で取扱い容易なアリルボロン酸エステル(Bpin)を用いる反応がより好ましいため、本反応剤を利用する反応系についても検討する。さらに、光学活性なアリルボラン(例えば、B(Ipc)2やB(DIPT))を調製し、立体選択的な反応を検討する。立体選択的反応で得られた光学活性な生成物の絶対配置を決定する(単結晶X線結晶構造解析)。続いて、反応に用いた光学活性なアリルボランの立体構造(E,Z)を決定する。それらの実験結果を基に大まかな反応機構を予想し、実際に計算化学的手法を駆使して反応機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進展し、残額が少額となったため次年度に繰り越すこととした。物品費に割りあてる予定である。
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Research Products
(4 results)