2018 Fiscal Year Research-status Report
アンモニウムヒドロキシド活性種の構造制御に基づく触媒的不斉加水分解反応の開発
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18K14223
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 英治 九州大学, 理学研究院, 助教 (70782944)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉加水分解 / 相間移動触媒 / 不斉加アルコール分解 / 不斉プロトン化 / 四級アンモニウム塩 / エステル類 / アズラクトン類 / 有機触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、キラル相間移動触媒を用いた塩基加水分解手法を用い、これまで人工触媒では困難であった、α-キラルエステル類の不斉塩基加水分解反応の達成を目指す。平成30年度では、医薬品や合成中間体として重要なアミノ酸エステル類の不斉塩基加水分解における収率や選択性の向上に向けた反応条件および触媒構造の最適化や反応機構解析を検討した。また、ConFinderを用いた擬似遷移状態探索を利用した反応機構解析および触媒設計・合成に取り組んだ。 まず、前者に関しては、様々な反応条件の検討の結果、過剰量の塩基を用いることが選択性を維持したまま収率を向上させる上で重要であることがわかった。また、加えて、アミノ酸エステル基質を加水分解することで生成するHFIPが生成物阻害を抑制する機能を有しており、触媒活性向上に極めて重要であることが明らかになった。さらに、ConFinderを用いた反応機構解析では、この加水分解反応における選択性の発現段階が、エステル加水分解およびアズラクトンの加水分解いずれの機構でも起こりうることがわかった。現在は、触媒の合理的設計・合成に取り組んでいる。 また、本研究を進める中、本触媒系にアルコールを反応剤として添加することにより、アミノ酸エステルおよびアズラクトンの不斉加アルコール分解反応が良好な収率かつ高い立体選択性で進行することを新たに見出した。不斉相間移動触媒を用いた加アルコール分解としては世界で初めての例となる。現在、本反応系の反応条件最適化、基質適用範囲の検討、反応機構解析についても検討を行っている。また、エステル不斉加水分解に関連したエノールエステル類の不斉加水分解反応に関しても検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度計画では、触媒系の収率および選択性の向上、反応機構解析について検討を進めることを計画した。結果としては、選択性を下げずに収率を向上する条件の発見や触媒効率を高めるために重要な知見を得ることに成功した。また、実験科学的、計算化学的な手法を用いた反応機構の解析を実施し、選択性発現機構について合理的に理解できる説明が可能になり、更なる反応の改良が期待できる結果が得られた。これらの研究成果を触媒研究において高い評価を得ているACS Catalysis 誌に発表した。また、反応系中にアルコールを添加することで相間移動触媒を用いたエステル類・アズラクトン類の不斉加アルコール分解が高選択的に進行することを新たに見出した (最大97% ee)。有機触媒を用いたアズラクトン類の不斉加アルコール分解はいくつか報告されているものの、相間移動触媒を用いて達成した例は本触媒系が初めてである。さらに、本触媒系は、これまで困難であった、α位に嵩高い置換基を有するアズラクトン類にも適用可能である。 従って、当初の計画の達成に加えて新たな触媒反応系の創出に成功している点からも『当初の計画以上に進展している』と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究で新たに見出したアミノ酸エステル類の不斉加アルコール分解反応について、反応条件の最適化、基質適用範囲の検討、実験科学的・計算化学的手法を用いた立体選択性発現機構の解析、触媒設計および合成などを実施する。また、基質については、アミノ酸エステルに加えて、アリールプロパン酸エステルについても検討を行う。また、エノールエステル類の不斉加水分解反応についても基質適用範囲の検討や反応機構解析を実施する予定である。
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Research Products
(6 results)