2019 Fiscal Year Research-status Report
ベンゾジヘテロール骨格を有するヘテロヘリセンの動的立体化学挙動と応用に関する研究
Project/Area Number |
18K14224
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
荒江 祥永 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (90754896)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘリセン / 立体化学挙動 / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近,フロインドール骨格を有するヘテロ[6]ヘリセンやベンゾジフラン骨格を有するヘテロ[7]ヘリセン類の量的供給法を確立している.また,得られたヘテロヘリセン類のユニークな立体化学挙動を明らかにするとともに,ヘテロヘリセンの特徴を利用した位置選択的官能基導入反応の開発を行ってきた.本年度は,フロインドール骨格を有するヘテロ[6]ヘリセンのユニークな立体化学的性質に影響を及ぼす要因の解明をさらに進めるために,新たなヘテロ[6]ヘリセンの合成を検討した.これまで検討してきたインドール骨格を有するヘテロ[6]ヘリセンは,窒素原子上の置換基の種類により,その立体化学挙動が大きく変化する.これは,我々が検討してきたヘテロヘリセン類に特徴的な「中央部外側の芳香環」と「窒素原子上の置換基」との立体反発によるものと推測し,その効果を明らかにするために,「中央部外側の芳香環のない」ヘテロ[6]ヘリセンの合成を種々検討した.その結果,ナフトフランとベンゾピロールを炭素-炭素二重結合で連結した化合物に対して,環化脱水素化(Scholl反応)を行うことで,目的とするヘテロ[6]ヘリセンの合成を達成した.現在,その詳細な構造と立体化学挙動を精査している.また,得られた知見をもとに不斉合成反応の開発へと展開する. 我々が既に確立しているヘテロヘリセンの量的合成法の基盤となる反応をさらに改良すべく検討していたところ,ユニークな反応を見出した.すなわち,アルキニルナフトール誘導体と種々の遷移金属化学種を塩基性条件下反応させると,ヒドロメタル化が円滑に進行し,空気下安定なσ-ヘテロアリール錯体が得られた.今後は,本反応を利用してヘテロヘリセン様「螺旋不斉遷移金属錯体」を合成するとともに,それらの応用研究へと展開する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度得られたフロインドール骨格を有するヘテロ[6]ヘリセンのユニークな立体化学挙動に及ぼす,窒素原子上の置換基効果を明らかにするため,新たに「中央部外側の芳香環がない」ヘテロ[6]ヘリセンの合成を検討した.その結果,ナフトフランとベンゾピロールを炭素-炭素二重結合で連結した化合物の環化脱水素化(Scholl反応)を鍵反応として,目的とするヘテロ[6]ヘリセンの合成を完了することができた.現在,その詳細な構造と立体化学挙動の解明に着手したところである. 一方,先に我々が確立しているヘテロヘリセンの量的合成の基盤となる反応について改良を検討していたところ,思いがけずユニークなσ-ヘテロアリール錯体が得られることを見出した.現在,この反応を利用したヘテロヘリセン様骨格を有する螺旋不斉錯体の合成に向けて分子設計を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
フロインドール骨格を有するヘテロ[6]ヘリセンについて,「中央部外側の芳香環」と窒素原子上の置換基との立体反発が立体化学的性質に及ぼす影響について実験的および計算化学的手法を用いて明らかにする.また,それらの知見をもとに、ヘテロ[6]ヘリセンの不斉合成反応(動的速度論分割)の開発を検討する. σ-ヘテロアリール錯体の合成反応について,さらに条件検討を行うとともに,得られた知見をもとに,ヘテロヘリセン様の構造を有する螺旋不斉錯体の合成についても検討する.
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