2020 Fiscal Year Research-status Report
ベンゾジヘテロール骨格を有するヘテロヘリセンの動的立体化学挙動と応用に関する研究
Project/Area Number |
18K14224
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
荒江 祥永 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (90754896)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェロセン / 面不斉 / パラジウム錯体 / σ-ヘテロアリール錯体 / 環化脱水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は昨年度,「2つのヘテロール環(芳香族環)を炭素-炭素二重結合で連結した化合物」を環化脱水素化することにより,ジヘテロール骨格を有するヘテロヘリセンの合成を達成した.本年度は,このことに着想を得て,面不斉を有するユニークな二核メタロセン類の合成を検討した.すなわち,「2つのメタロセン(シクロペンタジエニルアニオンという芳香族性配位子が金属イオンに配位したもの)を炭素-炭素二重結合で連結した基質」を合成し,これに対して,環化脱水素化を行うと,それぞれのメタロセン上に面不斉が誘起された二核メタロセンを合成できると考えた.本年度はメタロセンとして,中心金属が鉄イオンである「フェロセン」を用いた分子を設計し,環化脱水素化反応の基質となる分子を合成した.現在,合成した基質を用い,環化脱水素化反応について検討するとともに,得られた二核フェロセン錯体の構造解析を行なっている. 前年度に見出した空気下安定な「σ-ヘテロアリールパラジウム(II)錯体」の合成手法をさらに改良し,種々のパラジウム錯体を合成することが可能となった.そこで,これらの錯体の反応性を精査すべく,いくつかの反応を検討したところ,トリアリールホスフィン配位子からトリアルキルホスフィン配位子への配位子交換反応が容易に進行することがわかった.また,種々のクロスカップリング反応も進行することがわかった.今後は,これらの知見をもとに,σ-ヘテロアリールパラジウム(II)錯体を前駆体とする各種触媒反応の開発を検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度,2つのヘテロール環を炭素-炭素二重結合で連結した化合物に対し環化脱水素化反応を行うことで,ジヘテロール骨格を有するヘテロヘリセンの合成を達成した.このことに着想を得て,本年度は新たに「面不斉を有する二核メタロセン」の合成を検討した.その結果,2つのフェロセンを炭素-炭素二重結合で連結した二核フェロセン基質を合成することができた.現在,この基質を用いた環化脱水素化反応の検討と,得られた二核フェロセン錯体の構造解析を行なっている. 一方,前年度開発したσ-ヘテロアリールパラジウム(II)錯体の合成手法について適用範囲を拡張し,種々のσ-ヘテロアリールパラジウム(II)錯体の合成を達成した.また,得られたパラジウム錯体の反応性を精査したところ,ホスフィン配位子の交換反応や,各種クロスカップリング反応が進行することを見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
面不斉を有する二核フェロセン錯体について,環化脱水素化反応を用いた合成手法の開発を進める.また,合成が達成できた暁には,それらの光学分割を行いキラル物性を評価するとともに,不斉合成手法の開発も検討する.さらに,各種面不斉二核メタロセン類の合成も検討する. σ-ヘテロアリールパラジウム(II)錯体については,他の遷移金属錯体の合成法への拡張を検討する.また,得られるσ-ヘテロアリール遷移金属錯体を触媒前駆体とする各種触媒反応の開発も検討する.
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Causes of Carryover |
感染症の拡大により,当初の研究計画より遅れたため,次年度使用額が生じた.次年度も引き続き試薬などの消耗品に充てる予定である.
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