2020 Fiscal Year Research-status Report
安価で低毒性なマンガン触媒による高汎用性オレフィンメタセシス反応の開発
Project/Area Number |
18K14230
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
竹林 智司 沖縄科学技術大学院大学, サイエンステクノロジーグループ, 研究員 (10609283)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コバルト / NHC配位子 / ヒドロフォルミル化 / 水素分子活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
マンガン触媒によるオレフィンメタセシス反応の開発のために合成したマンガン錯体の合成において使用したNHC配位子をジコバルトオクタカルボニル錯体に配位させることによって世界で初めて0価コバルトトリカルボニル錯体の単量体の単離に成功した。0価コバルトトリカルボニル錯体 はオレフィンのヒドロフォルミル化反応触媒として工業的に重要な均一触媒である。この錯体は通常二量体と単量体の平衡化合物として存在するが、本研究課題では嵩高いNHC配位子を用いることによって単量体の単離に成功した。単離した単量体の水素分子との反応性を調べたところ、これまでに提唱されてきた二分子の単量体による水素分子の活性化は観察されなかった。一方、より小さなNHC配位子を用いたところ、通常の二量体と単量体の平衡化合物が得られた。この錯体は水素分子を活性化してコバルトヒドリド錯体を生成することから、0価コバルトトリカルボニル錯体は二量体として水素分子を活性化するということが明らかになった。さらに予想外なことに、二量体と単量体の平衡をNMRを用いて直接観察することにも成功した。通常、この平衡はNMR時間よりも早いためにそのNMRでの観察はピークのブロードニングとして観察される。しかしながら、NHC配位子を用いることによって、平衡の速度が低下し、二量体と単量体からのシグナルを両方NMRによって観察することに成功した。さらにEXSYとDOSY-NMRを用いることによって二量体と単量体の平衡を直接観察することに成功した。平衡定数の温度変化を調べることによってNHC配位子の構造がどのように平衡エントロピーとエンタルピーに影響するかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の研究目標であったマンガン錯体によるオレフィンメタセシス反応の開発には至っていないものの、本研究から派生したコバルトNHC錯体を用いた研究において予期していない研究結果が得られてきており、コバルトNHC錯体に関する研究を今後さらに発展させるための初期研究結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
コバルトNHC錯体に関する研究を今後さらに発展させ、重要な触媒反応への応用研究を行う。 マンガン錯体に関してはこれまでに得られている研究結果をまとめて論文として発表する。
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Causes of Carryover |
本研究を進める中で関連するコバルト錯体に関する研究結果が得られたため。 関連するコバルト錯体に関する研究を行うために使用する。
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