2018 Fiscal Year Research-status Report
新しい人工光合成系創成を指向した金属錯体の位置選択的集積
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18K14237
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
脇坂 聖憲 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (00786840)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デンドリマー / 前周期金属 / 集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化炭素の固定化による資源としての活用は、環境・エネルギー面から非常に重要なテーマである。現在の人工光合成と呼ばれる二酸化炭素固定化技術は課題が多く、分子ナノレベルの新しい触媒設計が求められている。本研究は、ディスクリートな樹上高分子であるフェニルアゾメチンデンドリマー (TPM-DPAG4) がイミンサイトにより金属イオンを階層的に集積する性質に着目した。金属イオンと共にリガンドを集積することができれば、デンドリマーを二酸化炭素還元に活性を持つ金属錯体の集積テンプレートとして活用することができると考え、本研究は金属錯体の位置選択的集積法の確立を目的とした。 前周期4d/5d金属とデンドリマーの相互作用の有無を確認すべく、ZrCl4, NbCl5, MoCl5, HfCl4, TaCl5, WCl6とTPM-DPAG4のUV-visタイトレーション実験を行った。結果、いずれの金属とも相互作用を示すことが分かったが、本来集積されるべき当量である60よりも過少当量で飽和してしまった。飽和点と各金属の平衡定数の間には相関 (r = 0.98) があることが分かり、金属のルイス酸性度が強すぎるため多座配位により当量集積できないと考えられる。そこで、ピリジン及び3-クロロピリジン共存下で再実験したところ、60当量で飽和し、且つ4つの独立した等吸収点を与えることが分かった。二種類のピリジンがリガンドとして働くことで多座配位が抑制され、当量的階層集積が可能となったと考えられる。そこでこの手法を用い、デンドリマーにルイス酸性の異なるTa(V), Nb(V), Mo(V), Zr(IV)をピリジンリガンド添加条件で階層的に集積することに成功した。以上のように、単独での当量集積が困難な前周期4d/5d金属を、リガンドを導入することでデンドリマーに当量的に階層集積することに初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特にルイス酸性の強い前周期4d/5d金属は、これまでフェニルアゾメチンデンドリマーへの当量集積が困難とされてきた。しかし、本研究はその定説を覆し、リガンドを導入するという新しいアイデアによりこの問題を見事に解決した。この手法は単にルイス酸性の強い金属の集積を可能とするだけではなく、金属錯体の当量的・階層的な集積を実現可能とする新知見をもたらした。よって、研究は計画通り順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度開発した金属集積法を応用し、人工光合成に必要なそれぞれの反応部位を与えるサイトとして三種の金属錯体をフェニルアゾメチンデンドリマーへ位置選択的に導入する。デンドリマー内における位置選択性は、各錯体とデンドリマー内各層上のイミン部位との相互作用の強弱を利用する。更に、各錯体を位置選択的に集積したデンドリマーを用い、均一系並びに不均一系における物性測定並びに光CO2還元等の反応を検討する。その際、プロトンは第四層のサイトで取り込み、pKa勾配に従い供給する。物性や触媒活性の評価はデンドリマーの有無条件で行い、金属錯体が位置選択的に集積された効果を検証する。
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Causes of Carryover |
消耗品を節約できたため次年度使用が生じた。次年度分と合わせ消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)