2018 Fiscal Year Research-status Report
三座配位子を有する金属錯体を基盤とした次世代レドックス光増感錯体の開発
Project/Area Number |
18K14238
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
玉置 悠祐 東京工業大学, 理学院, 助教 (10752389)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 光増感錯体 / S-T吸収 / 光触媒反応 / CO2還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
[Ru(N^N^N)2]2+型錯体を光増感錯体として用い、従来の[Ru(N^N)3]2+型錯体では実現できない次世代の光増感機能を発揮することを 目的として研究を行なった。 ■S-T吸収を示すRu(II)光増感錯体の開発:弱いS-T吸収を示した錯体の基本骨格を基に、三座配位子の電子的特性を系統的に変調させ、それによってRu(II)錯体のS-T吸収の波長領域および モル吸光係数がどのように変化するかを観測した。その結果、ターピリジン誘導体に電子求引性の置換基を導入することで、S-T吸収がより顕著に発現することが分かった。CO2還元触媒と組み合わせることで、赤色光(> 620 nm)で駆動する光触媒系の構築に成功した。 ■分子内π-π相互作用による物性変調:異なる二つの三座配位子を有するRu(II)錯体を基本骨格とし、ターピリジン誘導体の6位および6,6′′位にフェニル基を導入した錯体を合成した。しかしながら、フェニル基の立体障害等により立体構造が歪んでしまい、励起寿命が短くなってしまった。 ■立体配置の明らかな多機能複合系の構築:三座配位子を二つ有するRu(II)錯体光増感部をCO2還元触媒と連結した超分子錯体 光触媒を合成し、半導体光触媒との複合体を構築した。この複合系はCO2を還元しギ酸を選択的に生成する光触媒として駆動した。また計算科学の結果から、この光増感錯体は電子移動の整流作用が期待できることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S-T吸収を示すRu(II)光増感錯体の開発では、S-T吸収を発現するための傾向がある程度明らかになった。これにより720 nmまでの長波長吸収と327 nsの比較的長い励起寿命を両立するRu(II)光増感錯体の開発に成功した。 分子内π-π相互作用による物性変調においては、フェニル基を導入したことによる負の影響(立体障害等による構造の歪み)の方が現れてしまい、π-π相互作用による物性の改良は実現できていないが、配位子の変更等により当初の目的を実現できると考えている。 立体配置の明らかな多機能複合系の構築では、当初の予定通り、三座配位子を二つ有するRu(II)錯体光増感部を導入した半導体-超分子光触媒ハイブリッド系の構築に成功し、CO2還元光触媒として機能することを確かめた。さらに計算科学の結果からこのRu(II)光増感錯体は、電子移動の整流作用が期待できる、という点で固体材料とのハイブリッドに適していることが分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
S-T吸収を示すRu(II)光増感錯体の開発:ビス(メチルベンズイミダゾール)ピリジンの代わりに全く異なる三座配位子を用いた錯体との比較により、計算科学的手法とも組み合わせて、S-T吸収を強く発現する条件をより詳しく明らかにする。またRu(II)以外の中心金属を有する錯体へと展開する。 分子内π-π相互作用による物性変調:錯体の中心金属および三座配位子の構造を調整することで、フェニル基の導入が立体障害による負の影響を引き起こさず、π-π相互作用が物性を改善できるような構造の構築を目指す。 立体配置の明らかな多機能複合系の構築:半導体粉末と三座配位子を二つ有するRu(II)光増感錯体を導入した超分子光触媒jから成る複合系の光触媒機能の向上と従来の系との比較を行う。また半導体電極との複合化による光電極の構築にも展開する。
|
Causes of Carryover |
節約できたため、次年度使用額が生じた。次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
|