2018 Fiscal Year Research-status Report
Property of Incorporated Molecules in metal oxide capsules
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18K14239
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊川 雄司 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (10637474)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 分子カプセル / バナジウム / ホストゲスト |
Outline of Annual Research Achievements |
単一、あるいは複数の分子を一つの閉鎖的な空間に閉じ込める、分子カプセルに関する研究は、不安定化学種の閉じ込め、特異的な反応場としての活用など、重要な知見が得られている。バナジウムを基盤としたポリオキソメタレートに着目し、無機化合物からなる分子カプセルを創製し、内部に閉じ込められた分子の反応性と機能について解明することで、新しい“場”の概念を提唱することを目的とした。 VO5四角錘ユニットで形成されるポリオキソメタレートの内部に働く相互作用について議論するに当たり、半球状のポリオキソメタレートのホスト特性について詳細に検討した。半球状ポリオキソメタレートは、アニオンや、電子リッチな官能基を有する中性分子が包接可能である。ジクロロメタンを内部に包接した半球状ポリオキソメタレートを真空下、50度で処理すると、ジクロロメタンが除去された。単にゲストが除去されるのではなく、半球の底を成しているVO5ユニットの一つが反転していることが明らかとなった。反転した構造は、再びゲストを作用させるとゲストを包接し、元の構造に戻ることを確認した。この、ゲスト反転を利用することで、溶液中で、ゲスト包接の平衡定数を求めることで、ポリオキソメタレートとゲスト分子との間に働く相互作用について評価した。 VO4四面体ユニットで構成されたポリオキソメタレートにイットリウムカチオンを反応させると、四つのV11の環で構成されたケージ状の構造が得られることが明らかとなった。イットリウムをユーロビウムやイッテルビウムに変更しても、同様の構造が得られるとが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリオキソメタレートでつくられる内部空間を評価する手段がこれまでなく、研究提案時には、相対的な議論が限界であると考えていたが、しかし、半球状のポリオキソメタレートにおいて、構造変換を伴うゲスト除去、再包接という現象を見出したことにより、ゲストフリー体とゲスト包接体とを明確に区別することが可能となった。真空下でin-situ IRを測定すると、加熱とともに850 cm-1のピーク強度のみが減少した。これは、半球の底のV-O-Vの伸縮振動に由来するピークであった。ゲスト除去後、単結晶X線構造解析により、ゲストフリー体の構造を明らかにした。単にゲストが除去されるのではなく、半球の底を成しているVO5ユニットの一つが反転していることが明らかとなった。これは、金属酸化物で多面体再配列を確認した始めての例であった。反転した構造は、再びゲストを作用させるとゲストを包接し、元の構造に戻ることを確認した。窒素、酸素、一酸化炭素、メタンなどの極性の小さい分子は包接されないが、二酸化炭素、臭化メタンなど極性のある分子は半球状内部に包接されることが明らかとなった。この、ゲスト反転を利用することで、溶液中で、ゲスト包接の平衡定数を求めることに成功した。以上のように、VO5四角錐構造で囲まれる空間に対して、厳密な評価が可能となった。 さらに、四面体構造でも三次元的に閉じたケージ状構造を形成可能であることを世界で初めて見出しており、目的に合わせたバナジウムの配位形態による物性制御の可能性を見出した。 また、申請書に記載した球状ポリオキソメタレートについても順調に合成できており、研究遂行に向けたデータが着々と集まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、半球状のポリオキソメタレートのゲスト包接体とゲストフリー体の化学を関連付けて解明した。球状のポリオキソメタレートのゲストフリー体は、中空カプセルに相当する。昨年度までに合成に成功した球状ポリオキソメタレートに対して、各種条件下で刺激を与えることで、中空の球状ポリオキソメタレートを調製する。さらに、単結晶X線構造解析により中空構造を確認する。内包型と中空型のポリオキソバナデートの性質を比較することで、内包された分子のポリオキソメタレート骨格の物性に対する影響を議論することが可能となる。金属酸化物カプセルに内包されている化合物についても、キャラクタリゼーションを行い、バルクとの違いについて明らかにする。
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Research Products
(8 results)