2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a system for hydrogen addition to carbon dioxide and organic substrates under mild conditions using photocatalytic water oxidation
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18K14241
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
Jung Jieun 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (60801008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Carbon dioxide / Photoreduction / Photocatalyst / Iridium complex / Laser flash photolysis |
Outline of Annual Research Achievements |
様々なイリジウム(Ir)錯体を合成し、それらの酸化還元電位、および可視光照射下もしくは電圧印加下での錯体のCO2還元能(TONred = COおよびHCO2Hの生成量(mol)/Ir錯体の量(mol))や構造的安定性、もしくは触媒電流を測定・評価した。嵩高い置換基をもつIr錯体(Mes-IrPCY2)を用いた場合、N、N-ジメチルアセトアミドアセトニトリル(DMA)溶媒中でのCO2の光還元における触媒性能を向上することに成功した。特に、犠牲剤をN[(CH2)2OH] (TEOA)から1,3-dimethyl-2-phenyl-2,3-dihydro-1H-benzo[d]imidazole (BIH)に変えることで触媒性能がさらに向上し(TONred = ~1000 at 48 h: TONHCO2H = 830(40), TONCO = 190(10), TONH2 = <5)、ギ酸(HCO2H)選択性も74%まで向上できた。この結果は、これまでの他の研究グループの「単核金属錯体触媒」を用いる研究成果と比較して過去最高の触媒回転数である。サイクリックボルタンメトリー(CV)、レーザーフラッシュフォトリシス、紫外可視近赤外分光法などの測定を駆使してIr錯体の物性および触媒の反応機構についても調べた。それらの実験から、各触媒の還元電位および励起状態の還元電位を同定し、本CO2還元反応におけるIr錯体触媒の寿命は、電子的効果より立体効果に大きく依存すると見積もられた。 今後は、これらの錯体を用いるCO2還元法に関して得られた基礎的知見を応用展開する。これまで犠牲剤として使われたTEOAやBIHを使わず、再生可能エネルギー(H2ガスおよび水)を水素源として可視光照射下もしくは電圧印加下でCO2還元反応を調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度には計画した通り、新しいIr錯体(嵩高い置換基をもつtBu-IrPCY2およびMes-IrPCY2)を合成のうえ、その光照射下におけるCO2還元能を検討し、様々な反応条件下での構造的頑健性を触媒活性の寿命と物性を評価した。反応条件としては、Ir錯体(IrPCY2:0.1 mM)、犠牲剤にはTEOA、溶媒としてDMAを用い、このように調製した反応用サンプルは試験管に入れCO2バブリングを10分間施した後、光源を照射(λ > 400 nm)した(TONred = 63 at 48 h: TONHCO2H = 33,TONCO = 30,TONH2 = <2)。次に、少量の水を加えた溶媒(TEOA/DMA/H2O = 2:9:1)中でのMes-IrPCY2を用いる反応では、HCO2H形成が優先し、反応性がさらに高くなった(TONred = 173 at 48 h: TONHCO2H = 117,TONCO = 56,TONH2 = < 5)。犠牲剤をTEOAからBIHに変えた結果、CO2の光還元におけるMes-IrPCY2の触媒性能はターンオーバー数(TON)が173から~1000まで向上した。CH3OHの形成は確認できていない。 次に、電気化学的な物性を調査する目的で、CVを用いる酸化還元電位測定を行なった。いずれの錯体においてもCO2雰囲気下で触媒電流に対応する電流値の上昇が見られた。レーザー測定によってIr錯体の励起状態寿命を調査し、電子供与体(犠牲剤)であるTEOAやメトキシベンゼン誘導体の濃度を変化させて行う励起Ir種の消光実験によって各Ir錯体の励起状態の還元電位を同定した。IrPCY2やMes-IrPCY2の還元電位もしくは励起状態の還元電位があまり違わなくても、CO2還元能は大きく変化したことで、本CO2還元反応では立体効果に大きく依存することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度には、可視光照射下、犠牲剤の存在下でのCO2還元は成功したが、H2ガスの活性化によるCO2還元反応では低い反応性を示した。反応条件としては、Ir錯体(0.1 mM)、溶媒としてDMAを用い、このように調製した反応用サンプルは試験管に入れCO2バブリングを10分間施した後、別で用意したH2ガスをシリンジ(2 ml)で注入した。光源を照射(λ > 400 nm)下、16時間反応させたが、生成物は得られなかった。不均一系触媒を用いたH2ガス活性化によるCO2還元反応の報告によると、少なくとも高温(300°C)では、H2ガスの混合比が高い方(H2:CO2 = 3:1 under 0.1 MPa)の反応が報告されている。本研究室ではこれまでガス混合装置が設備されていなかったため、H2とCO2とを正確な量比で混ぜることが困難である。今後、ガス混合装置(KOFLOC, BR-2C)を導入すればH2とCO2を希望の混合比で混合し、様々な実験を行うことができる。さらに、最近本研究室に購入したガスクロマトグラフ(BIDシステム)は低級炭化水素をより高感度で分析できるので、H31年度にはH2ガス活性化に積極的に取り組む。 また、合成した錯体を共同研究者のもつ半導体技術と組み合わせ、CO2還元剤(電子源)としてH2Oを用い、光還元触媒としてだけではなくCO2電気還元触媒としてもより高い性能や実用性をもつものへと発展させる。すなわちIr錯体をカーボンクロス(CC)やカーボンペーパー(CP)に装着し、分子-固体複合材料(CC-Ir錯体やCP-Ir錯体)を製作のうえこれらを電極化し、水中でのそれら電極材料の電気化学的性質(アルゴンおよびCO2雰囲気下での酸化還元電位および電圧依存的な電流値の時間変化やCO2還元能の時間安定性など)を測定、比較評価する。
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