2018 Fiscal Year Research-status Report
分子ローターの2次元高密度集積に伴うキラル反転相転移現象の検証
Project/Area Number |
18K14242
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀井 洋司 大阪大学, 理学研究科, 特任研究員(常勤) (90809485)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 分子ローター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子ローターの2次元集積により、分子ローター間でのギアモーションを利用した2次元物質におけるキラル反転相転移現象の発現を目指している。1年目は金属への配位能力を有する分子ローターの合成を行い、LB法を用いた配位高分子合成法を利用することで分子ローター集積体の合成までを行うことができた。分子ローターは配位能を有するテトラフェニルカルボキシポルフィリン(TCPP)と、回転部位として働くフタロシアニン(Pc)からなる。分子ローター集積体の合成に伴うπ-A曲線において、TCPPのみを用いた場合と比較して大きな面積で表面圧の上昇が見られた。これは、分子ローターの方がPcを含んでいる分だけ嵩高いためであり、予想される結果と一致していた。また、金属イオン水溶液に分子ローター溶液を展開すると、不溶性の膜状物質が得られたことから、強固な2次元分子ローター集積体の合成に成功したと考えられる。2次元膜をマイカ基板上に写し取り、AFM測定を行ったところ、膜状の構造を観測することに成功した。紫外可視吸収スペクトル測定では、集積前後においてスペクトルに明確な変化が見られなかったことから、分子ローターの構造が保たれていることを確認した。一方で、温度可変の薄膜吸収スペクトルでは、分子膜の熱膨張による微小な吸収強度の減少のみが観測され、本研究で目指している2次元物質の相転移現象を観測するには至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目において、分子ローターの合成と集積体形成を実行することができた。一方で、分子ローターの合成において副反応が起こってしまい、分子の単離に難航したため、1種類の分子ローターしか合成できなかった。また、AFMでの単分子膜の構造観測に成功したが、分解能が不十分なため、個々の分子を観測するには至らなかった。相転移現象を温度可変薄膜吸収スペクトルで観測しようとしたが、薄膜の熱膨張に由来した微小なスペクトルの変化しか観測でいなかった。以上のことから、上記評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針は下記の通りである。 1)分子ローターの配位子等を変更することで、分子のライブラリーを形成する。 2)分子ローター集積体の膜形成プロセスの最適化を行う。 3)これまでに合成した分子ローター集積体を金基板上に写し取り、空間分解能の高いSTM測定を行う。 4)温度可変吸収スペクトルの代替として、微小試料を熱測定可能な超高速DSCを用い、分子ローターの回転に由来した相転移の有無を確認する。
|