2018 Fiscal Year Research-status Report
Reduction of Carbon Dioxide to Methanol Using Heterometal-doped Copper Hydride Clusters
Project/Area Number |
18K14243
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中前 佳那子 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20757231)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 銅ヒドリド / 金属クラスター / 異種金属 / 貴金属代替材料 / メタノール / 二酸化炭素 / ホスフィン / 水素化触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、二酸化炭素の高効率な再資源化とエネルギー媒体として液体で取り扱い易いメタノールを基盤とする維持可能な循環型物質社会の構築を念頭に、これまでに達成されたことのない分子性金属化合物で行う二酸化炭素の多段階水素化によるメタノール合成を第一の目的とする。既に貴金属代替材料開発の観点から合成した銅ヒドリドクラスターは、単一分子内に複数の銅イオンとヒドリドを有しており、温和な条件下で二酸化炭素を即座に活性化しギ酸イオンを安定化する。そこでまず、触媒的な反応からギ酸塩の回収を検討した。具体的には、当研究室で独自に開発した直鎖型四座ホスフィンdpmppm (= Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2)PPh2)で支持した銅2核もしくは銅8核ヒドリド錯体を触媒とし、100℃、二酸化炭素(2 atm)と水素(4 atm)圧下、DBU (1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)を塩基として添加する条件でギ酸塩が触媒的に得られた。種々分析の結果より、銅2核及び銅4核ホルマト錯体をそれぞれ経由して反応が進行するものと推定され、触媒的な二酸化炭素の還元が銅多核骨格を介して起こる初めての例である。特に銅8核ヒドリド錯体から発生する銅4核ホルマト錯体では、銅に架橋したギ酸イオンに隣接した位置でヒドリドが再生している可能性があることから興味深い。以上より目的の二酸化炭素からメタノールへの変換に発展させるために、銅8核ヒドリド錯体に酸素原子と親和性の高い第2の金属イオンを導入する検討を行い、生成したギ酸イオンを金属イオンにより強く配位させて求電子性を高め、分子内のヒドリドによる多段階の水素化を促す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直鎖型四座ホスフィンdpmppmを支持配位子とする銅2核及び銅8核ヒドリド錯体が二酸化炭素の水素化触媒として機能することを見出した。水素ガスを用い触媒的に二酸化炭素からギ酸塩を合成する触媒に安価な銅を用いた例は少ない。さらに、触媒反応後の溶液のNMRやESI-MS測定から、銅2核及び銅4核ホルマト錯体をそれぞれ経由して反応が進行するものと推定され、銅多核骨格を介する例としては初めてである。
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Strategy for Future Research Activity |
銅ヒドリドクラスターの活性点と隣接した位置に、酸素原子と親和性の高い第2の金属イオンを導入した新たな分子性化合物を合成する。続いて、新規化合物とCO2との反応性について、特にジオキシメチレン(H2COO)への水素化の観測もしくはCOを通る第二の経路の存在に着目して反応を詳細に追跡する。CO2が多段階に水素化される反応条件を最適化し、温度やCO2の加圧の程度を調整することで中間種の単離を試みる。さらに13C標識したCO2を反応に用いて反応過程の13CO2変化を核磁気共鳴分析(NMR)から追跡する。以上の実験を進めるとともに理論計算から評価を行う。X線結晶構造解析で得られた銅ヒドリド錯体の構造を初期構造としてCO2との反応の中間体と遷移状態を決定し反応機構の妥当性を検証する。特に律速段階と考えられるジオキシメチレン水素化の活性化エネルギーに着目して評価する。以上が達成されれば、本課題の最終目的であるメタノール合成の触媒反応を検討する。触媒サイクルを考えると、最終段階の金属配位のメトキシドイオン(H3CO)が水素化されてメタノールが生成し、金属化合物がヒドリドクラスターに再生するための水素源が必要となる。第一に気体の水素を用いて検討する。反応が進行しなかった際は、ヒドロシラン(R3SiH)を利用し金属イオンに配位するメトキシドイオン(H3CO)をシリル保護したメタノール(R3SiOCH3)として回収した後に加水分解してメタノールを得る。
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Causes of Carryover |
先に銅多核ヒドリド錯体を用いた二酸化炭素の触媒的な水素化反応を検討したため異種金属イオンの導入検討が遅れた。2019年度にて金属試薬を購入し、第2の金属をドープした銅ヒドリド錯体の合成を試みる。
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Research Products
(14 results)