2019 Fiscal Year Research-status Report
二次元配位高分子ナノ粒子の開発とドメインサイズによる構造ダイナミクス制御
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18K14245
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大谷 亮 九州大学, 理学研究院, 准教授 (30733729)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 熱膨張 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属イオンを有機配位子で架橋した無限骨格を持つ配位高分子は、柔軟な配位結合ネットワークに基づいた構造ダイナミクスを示し、ガスや熱、圧力などの外部刺激に対して特異な構造変化すなわち応答性を示す物質群である。本研究では、異方的な構造有する二次元シート型配位高分子[Mn(salen)]2[MnN(CN)4](1)に着目し、ナノ粒子化することでドメインサイズと配位結合強度が特に熱・圧力といった物理刺激応答性に与える影響について明らかにすることを目的としている。 その中で、1の類縁体として[Mn(salen)]2[ReN(CN)4](2)の合成に成功し、単結晶構造解析を行った。2はReとMnの原子半径の違いを反映し、二次元シートのジグザグピッチが大きくなった。それに伴って2つの結晶水を取り込むことで、シートのひずみが観測された。これは、1つの結晶水を含む1とは異なる構造特性である。更に、温度変化測定から熱膨張挙動を検討した。昇温による水の脱離に伴って、シートのひずみが解消し1と同型の構造へと変化した。また、1よりも大きな異方的熱膨張挙動を示した。これはジグザグピッチの大きさの違いを反映している。 更に、1と同様の方法で、2の粉末、ナノ粒子の作成を行い、温度変化粉末X線回折測定を行った。その結果、1と同様にナノ粒子の方が小さな熱膨張係数を持つことが分かった。C,H,N元素分析の結果からは粉末とナノ粒子における組成の違いは観測されなかったが、2に対して蛍光X線分析測定を行うと、ややMn:Re比率の違いがみられた。これは、元素分析の精度では明らかにできない組成の違い、すなわち欠陥の量の違いを示唆している可能性がある。現在、厳密な組成の決定と、特に水吸着測定からゲスト取り込みの違いについても検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していなかった類縁体2の合成と熱膨張挙動の解明まで成功した。1と併せてメカニズム解析することで、粒子サイズと機械的特性に関する新しい知見が得られると期待できる。以上より、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1と2において結晶水の数の違いが観測されたことから、熱膨張挙動だけではなく、水吸着特性ついて検討する。粉末、ナノ粒子両方の評価を行うことで、化学的刺激による構造柔軟性に関する知見を得る。
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Causes of Carryover |
新型コロナにより、年度末の出張予定が全て変更になったため若干の余りが生じた。2020年度には、論文化に向けた詰めの段階に入る予定であり、余剰分含めて適切に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)