2018 Fiscal Year Research-status Report
ランタニド間相互作用による異核複核錯体の機能創発-近赤外励起・発光プローブの開発
Project/Area Number |
18K14248
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
唐島田 龍之介 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40783303)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 異核複核錯体 / クラスター錯体 / ランタニド / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,異核複核錯体を基盤としたLn間の相互作用(f-f communication)によるダウンシフティング(DS)・アップコンバージョン(UC)・ダウンコンバージョン(DC)を示すプローブや発光イメージング・磁気共鳴イメージング(MRI)を有するプローブを創製することにある. 本年度は初めに,チアカリックスアレーン(TCAS)を配位子として用いてLn1TCAS1錯体の分取から異種Ln'との混合による異核複核錯体(Ln2Ln'1TCAS2錯体)の選択的合成を試みた.最初の関門であるLn1TCAS1錯体の分取については,分取条件の探索や中間体として減少するLn1TCAS1錯体の分取量を増やす試みを数多く行った.その結果,LnにTbを用いたところ,狙い通りTb1TCAS1の分取に成功した.さらに,経時的に減少する中間体の分取量を向上させるため,サンプル中に疎水性カチオンを添加することで錯形成の自己組織化の速度を制御でき,分取量を向上できた.この成果で,錯形成反応の速度に関する新たな知見が得られた.次に異種Ln'にYbを用いて異核複核錯体の合成を試みたが,Tb2Yb1TCAS2錯体に加えて同核複核錯体Tb3TCAS2が同程度生成した.TbとYbの混合比やpH,反応時間を考慮してもTb3TCAS2の生成を完全に抑えることができず,異核複核錯体の選択的な合成とはならなかった. また,細胞へ導入する際のアクティブデリバリーとしてシリカナノ粒子など,異核複核錯体を固体として用いることを想定しているため,同核錯体ではあるがTb3TCAS2錯体の固体試料について粉末やポリマーへ分散させた試料の発光特性を調査した.固体中では溶液中と比べ発光量子収率が大きく向上し,異核複核錯体においても固体として応用した場合の可能性の高さを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標の選択的合成法の開発において,中間体のLn1TCAS1錯体の分取に成功したが,その先の異核複核錯体の生成において目的物が6割程度となり,異核複核錯体の選択的な合成とはならなかったため,その先のLn間相互作用によるDS・UC・DCなどの特性評価に至れなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はTb1TCAS1錯体の分取でうまくいかなかったのは錯形成の速度論的な相性の問題と考える.すなわち,Yb1TCAS1錯体やNd1TCAS1錯体など別のLn1TCAS1錯体からの選択的合成を試みる.様々なLnについて分取と異核複核錯体の選択的な合成を試み,最低でも9割以上の純度を目標に取り組む.それでも混合物になり,選択的合成法として確立させるのが難しい場合は,調査が大変煩雑になるが,混合物の組成を加味して発光特性などを明らかにする.混合物の組成自体はキャピラリー電気泳動法や質量分析法で分析が可能である. その後当初の計画通り,得られた異核複核錯体を用いてイメージングプローブへの応用を検討する.
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Causes of Carryover |
申請金額と交付金額の相違から,購入する物品を選定し直す必要が生じ,研究計画を修正したため.また,研究計画通りに進まず少々遅れているため,予定通りの予算を使用するまで研究が進まなかったから. 研究計画通りに進まず,検討事項が後ろ倒しになっただけなので,研究が進行すれば予定通りの予算が必要となる.次年度は研究計画を速やかに進め,昨年度着手できなかった研究計画と今年度の研究計画を実行する予定であり,次年度使用額は当初通り必要となる.
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