2018 Fiscal Year Research-status Report
遠紫外光を利用した極表面敏感なプラズモン共鳴センサーの開発
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18K14251
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田邉 一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80709288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 表面プラズモン共鳴 / 遠紫外 |
Outline of Annual Research Achievements |
波長200 nm以下の遠紫外を含んだ波長域を活用した、新しい表面プラズモン共鳴(SPR)センサーの開発を目指し、研究を進めた。独自の減衰是反射型遠紫外分光装置を利用することで、アルミニウムのSPR特性の測定を実現した。その結果、以下に記載する、プリズム上に蒸着したアルミニウム表面の環境に依存したSPR波長変化の検出に成功した。まず、アルミニウムの上に各種液体(水やアルコールなど)を滴下すると、液体の屈折率とアルミニウムのSPR波長の間に正の相関が見られた。また、濃度を変えたスクロース水溶液を利用した、検出も行った。これは、本系が従来の可視域で動作するSPRセンサーと同様に、屈折率センサーとして機能することを示す。また、SPR波長と滴下試料の吸収波長が重なった場合、SPR波長シフトの増大が見られた。これは、物質の吸収波長付近での屈折率の異常分散による結果であり、波長をチューニングすることで物質選択的な検出が可能になることを示唆する結果である。さらに、アルミニウム薄膜表面にナノメートルオーダーで厚さを制御した有機薄膜(具体的にはイオン液体薄膜)を形成してスペクトルを測定したところ、少なくとも厚さ2 nmの薄膜形成をSPR波長のシフトとして検出することが出来た。従来活用されてきた可視域よりも波長の短い光を利用することで、表面敏感な検出が実現されていると考えている。今後は、より具体的なアプリケーションを目指して、バイオセンサーへの展開を進め、既存の可視SPRセンサーとの比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、モデル分子を用いた基本的な系でのアルミニウムのSPR特性の変化を明らかにした。特に、狙っていたとおりに、分子の電子励起吸収に伴うSPR波長シフトの増強や、短波長の光を利用することによる薄膜検出能を、実証することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に従って、モデル系で実証した紫外SPRの強みを活かした系として、バイオセンサーとしての検討を進める。まず、可視SPRで汎用的に利用されている、抗原抗体反応の検出を行う。さらに、検出する分子の吸収スペクトルを測定し、吸収波長にSPR波長を合わせることで、検出感度の増強と選択性を実現する。
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Causes of Carryover |
イオン液体をはじめとした試料の一部について、研究室在庫を利用したため、次年度使用額として残金が生じた。抗原や抗体などの試薬購入に充てる。
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