2021 Fiscal Year Research-status Report
流入起源の懸濁態リンが湖内水質に与える影響に関する研究
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18K14262
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| Research Institution | Shimane University |
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Principal Investigator |
江川 美千子 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助手 (20565882)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 形態別無機態リン / 斐伊川 / 懸濁粒子 / 粒度 / 汽水湖宍道湖 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
閉鎖性の強い汽水湖や内湾において富栄養化による水質汚濁が顕在化して久しい。汽水湖である宍道湖においても時折アオコが発生し，その要因の一つに湖底からのリンの溶出が挙げられる。本研究の目的は，新規に開発した形態別無機態リンの分画定量法（江川ら，2017）を用いて，湖底堆積物からのリンの溶出機構を解明することにある。
2021年度は，宍道湖に流入する斐伊川中流～最下流及び支川の赤川下流域の出水時の濁水を採水し，その懸濁粒子中の無機態リンを前述の方法で定量した。その結果，Fe型リンの含有量及び存在割合が他の型のリンに比べ高い傾向（Fe型リン割合：斐伊川下流，最下流20～60％，赤川35～65％）にあった。しかしながら，極端に流量が大きいときには，斐伊川，赤川ともに無機態リン，特にFe型リンの含有量が低下する傾向を示した。これは，出水時の掃流力の違いによるものと考えられるが，引き続き各態リンの含有量と懸濁粒子・河床堆積物の粒度，流量との関係を調査する必要がある。
さらに，斐伊川中流（三代橋），最下流（灘橋），赤川下流（加茂大橋），及び赤川支川の佐世川（立原橋）の懸濁粒子(SS)濃度と全リン(TP)濃度の関係をみたところ，いずれも高い相関性を示し，特に赤川支川の佐世川でSS中のリン含有量が高いことがわかった。これは赤川流域の周辺土壌や土地利用に関連があるものと推察される。しかし，赤川の流量は斐伊川のそれと比べて僅かであることから，赤川の斐伊川本川への影響は小さいものと考えられる。
また，斐伊川下流（神立橋），最下流（灘橋），赤川下流（加茂大橋）でのSS中の各態リン濃度と流量の関係については，流量が大きい時にPOP（懸濁態有機リン）濃度が高くなる傾向を示した。POPは，宍道湖に流入したのち無機化し，その一部はFe型リンに移行すると考えられることから，今後注視する必要がある。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
斐伊川，赤川での濁水調査は予定通り実施でき，懸濁態リンの解析を行うことができた。一方，宍道湖の定期調査は新型コロナウイルス感染症の影響を受け，春から夏季にかけて十分に実施できなかった。そのため，データ収集の条件に合った時季が次年度までなく，これまでの調査研究から得ているFe型リン負荷の重要性や淡水から汽水への水質変化（硫化水素の生成）とリンの溶脱特性との関係などの実態を明らかにすることができず，当初の計画よりやや遅れることとなった。そこで事業期間の延長の申請を行い，2022年度での研究の完成を目指す。
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| Strategy for Future Research Activity |
2022年度は，（１）宍道湖湖底堆積物（とくに表層0-1cm）の形態別無機リンの存在量や存在割合に関する知見や情報を収集し，リンの流入負荷の詳細な実態把握や各態リンの移動特性，湖内水質に与える影響，さらに斐伊川出水時の濁水の粒度分布について調査研究を進めていく。（２）各態リン濃度およびその含有量と流量の関係を明らかにするため，雨の降り始めから雨が止むまでのデータを経時的に調査し解析する。（３）室内実験により斐伊川出水時において湖内に流入し沈降する懸濁粒子の溶出特性について検討する。
以上，懸濁粒子の起源や宍道湖へのリンの流入負荷源として果たす役割や影響を究明し，出水時に斐伊川から宍道湖に流入する懸濁態リンが湖底で堆積したのち，湖底で生成される硫化水素と反応しリン酸を溶離するプロセスの実態を解明することで本研究を完成させる。
さらに，新たな水質改善（硫化水素発生の抑制など）を目指した効果的な水質保全対策を自治体に提言し，また，科研費成果報告書の発行や学会での発表による研究成果の公表を行う。
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| Causes of Carryover |
当初予定していた宍道湖の経月調査が新型コロナウイルス感染症の影響を受け，春から夏季に十分に実施できず年度内完了が困難となり，そのため予定額と執行額が異なった。研究計画に変更はないので，感染予防に留意しながら前年度執行予定の研究費により，当初の計画を達成すべく研究を進める。
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Research Products
(1 results)
