2018 Fiscal Year Research-status Report
Preparation of Carbon Nanofibers from CO2-mixed Modeland its Reaction Mechanism
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18K14264
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中林 康治 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (80752550)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カーボンニュートラル / 二酸化炭素 / カーボンナノファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
採択課題は、「二酸化炭素を利用した革新的カーボンナノファイバーの創製技術の確立」である。18世紀に起こった産業革命は、人類の生活を劇的に変化させ、世界経済は急速に発展した。しかしながら、産業革命以降の化石エネルギーの大量消費に伴い大量の温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)が排出されるようになり、温室効果による地球温暖化が顕在化し、人類の営みに大きな影響を及ぼすことが危惧されている。全国地球温暖化防止活動推進センターによれば2015年の日本におけるCO2排出量の内訳に着目すると実に71%もの割合が火力発電所や工場などから排出されている。このような莫大な量のCO2排出を如何に有効活用していくかをアカデミアと産業・社会に「問う」。このような背景から近年においては、持続可能な社会を構築するために、排出後のCO2に対する固定化・有効利用技術の開発が求められている。本研究では、CO2の有効利用法の一つとして、CO2を炭素源として用いたカーボンナノファイバー(CNF)材料の創製を提案する。炭素ナノ繊維(Carbon nanofiber : CNF)は1~100 nmオーダーの繊径を有する繊維状炭素材料であり、炭素六角網面の積層によって形成される点で多層CNTなどに近い構造を持つ。製造工程の違い(反応温度、炭素源ガス種、触媒金属種)によって炭素六角網面の多様な積層形態および表面構造を実現することができるため、CNFは電池材料、吸着材、触媒担体といった幅広い分野への応用が検討されている炭素ナノ材料である。本技術がCO2の固定化・有効利用技術として確立されれば社会的、学術的に大変意義深いものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年度では、CO2を用いて直接的にCNFに転換する技術の確立に挑戦した。具体的には、使用する装置としてCCVD法を選択した。CCVD法では、触媒が存在する電気炉(500℃~1000℃)にフロー式で炭素源ガスを流通させるだけでCNFを得ることができる。また、触媒としてはFe/Ni合金系触媒を用い、炭素源ガスにCO2、H2、C2H4を組み合わせた混合ガス使用した場合、CNFが得られることを明らかにした。CO2由来の炭素が実際にCNFとして固定されているかを確認するために、CO2の炭素がアイソトープラベルされた13CO2を用いてCNF調製を行いCNF中の13C量についても調査した。その結果、ラマンスペクトル分析により合成されたCNF中に13Cが存在することも確認しており、CO2を直接的にCNFに転換させることに成功した。しかしながら、①Fe/Ni合金系触媒を用いたCO2存在下でのCNF成長のメカニズムが不明なこと、②CO2と他の有機系ガスとの混合ガスを用いた場合ではCNFを合成できたのにもかかわらず、CO2のみを炭素源ガスとして用いた場合はCNFを調製できていないこと、などが課題として残っており更なる学術的な研究の余地も多く残されている。現在これまでの進捗状況を鑑み、現時点での成果を論文に執筆中である。論文に投稿することで他者を出し抜いていち早く該技術の優位性を示すことが目標である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、さらに学術的に強固なシステムにするに、CO2ガスがどのようなメカニズムでCNFへと転化されるのかを明らかにし、該技術の一般的指針を獲得することは必須である。具体的には、なぜFe/Ni系触媒を用いるとCO2をCNFにできるのかを探索することを調査する。また、将来的な工業的展開を目指し、実際の火力発電所や工場で排出されるであろうCO2ガスと様々な種類の有機系ガスとの混合ガスを用いてCNFを調製することで本研究の汎用性を示す。さらに、予備実験の段階では炭素源ガスとしてCO2のみを用いた場合だとCNFを合成することが不可能であったが、最終的にはCO2ガスのみでのCNF合成を目指し反応条件や新規触媒を探索する。 研究の更なる発展を考えて、将来的な研究では、炭素源ガス・炭化水素ガスを利用した炭素材料の調製を積極的に行っていく。具体的には、有機系のガスが多く発生する場所、例えば工場排ガスのような系をターゲットにして炭素材料の調製を行いたい。有機系の工場からは、二酸化炭素のみならず、メタンやエタン、エチレンといった炭化水素ガスが混在している。研究では、成果の出口をしっかりと設定しながらも、基本に立ち返って、どのような炭素源ガスから炭素材料ができるのか、あるいは、どの種類の炭素源ガスを同時に使えるかなどの統計的な研究を行いたい。それと同時に、カーボンナノファイバーを調製するための触媒作りも積極的に行う。当研究室には触媒に関する知見も多く存在するのでその知識を活かしながら新規なものを検討したい。
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Research Products
(1 results)