2018 Fiscal Year Research-status Report
最重安定元素ビスマスを基盤とした高放射線吸収性・高屈折性プラスチックの開発
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18K14269
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松村 吉将 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (30791818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 屈折率プラスチック / ビスマス / 光学材料 / 有機-無機ハイブリッド材料 / 高分子合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
最重安定元素であるビスマスは、高い原子屈折率と優れた放射線吸収性を有する。そのため、柔軟性と透明性を有する有機ポリマーと分子レベルで安定に複合することができれば、高屈折性・放射線吸収性などの特性を有する機能性透明材料の開発が期待できる。そこで、ビスマス含有ポリマーの合成を目的として以下の研究を行った。 まず、ビスマス含有モノマーの選定としてビニル基、アリル基などのラジカル重合性官能基を有する化合物の合成を行った。各種化合物の合成を検討したところ、ジアリルアミノ基を有するビスマスージチオカルバメート錯体(モノマー1)と、トリスチリルビスマス(モノマー2)の二種類のモノマーが安定に単離できた。次にこれらのモノマーの重合性を評価した。今回は単独ラジカル重合とチオール類とのエンチオール反応に基づく重合の二種類を検討した。その結果、モノマー1はいずれの重合反応も進行しなかったが、モノマー2は良好な重合反応性を有することを見出した。さらに、モノマー2の重合によるフィルムの作成を検討したところ、透明なフィルムを得ることができた。得られたフィルムの屈折率を評価したところ、1.64~1.70程度の高い屈折率を有していた。すなわち、ビスマスとポリマーを複合することで、想定していた通りに高屈折率な光学材料を設計できることが明らかになった。現在、各種汎用ラジカル重合性モノマーとの共重合について検討中である。 本材料が発展すれば、優れた高屈折性光学材料などを開発できる。平成30年度の研究成果は、そのための重要な基礎的知見を与えたものであり、今後の材料設計の大きな指針となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたモノマーの合成を行い、安定性と重合性の評価をすることができた。特に一部のモノマーは良好なラジカル重合性を有していたため、透明フィルムの作成にも成功した。このフィルムの屈折率を評価したところ、高い屈折率を示したので、ビスマスが屈折率の向上に寄与することを明らかにできた。以上のことから、ほとんど当初の計画通りに研究が推進できており、興味深い成果が得られるに至っていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、さらなるモノマー構造の最適化を行い、より屈折率の高い材料の開発を目指す。また、ビスマスモノマーと各種汎用モノマーとの共重合を行うことで、材料としての利用に欠かせない柔軟性や強度を有する透明フィルムを開発する。さらに、現在評価に至っていない放射線遮蔽性についても透過型のX線分析装置などを活用して評価を行い、材料としての価値をさらに明確にする予定である。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた紫外可視分光光度計について、メーカーがキャンペーン中であったため申請時の見積よりも50万円程度安く購入できた。また、参加を予定していた第67回高分子討論会(札幌)が大地震により中止になったため旅費を使用できなかった。 一年間の研究を通して、ポリマーフィルムを精密に成形するためには、用いる基板や型の材質についても詳細な検討が不可欠であるということが分かった。そこで、より良いフィルムの作成方法を広く検討するために、様々な成形用の消耗品類を揃えるための経費として重点的に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)