2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14273
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
天本 義史 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (70773159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エラストマー / 分子動力学シミュレーション / ハロゲン結合 / 複雑ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、複雑ネットワーク科学に基づくエラストマーのネットワーク構造の定量化と応力の記述に取り組んだ。前年度に引き続き、分子動力学シミュレーションのKremer-Grestの粗視化モデルを用いた。4分岐の星形高分子の鎖末端を連結した反応性エラストマーと架橋点をランダムに繋いだランダム架橋エラストマーを構築した。その後、体積と温度一定という条件の下、分子動力学シミュレーションで一軸伸長を行った。複雑ネットワーク科学で用いられる近接中心性という指標を導入し、架橋点をノード、高分子鎖をリンクとして、ネットワーク全体に対する各架橋点の繋がりを定量化した。また、初期の架橋点を取り入れる事で、トポロジカルな情報と空間的な情報を取り入れた修正中心性を定義し、各架橋点に対して算出した。全てのエラストマーの修正中心性が一軸伸長下の応力を決定付ける架橋点間距離や架橋点のゆらぎを統一的に記述できる事を見出した。また、修正中心性と応力を決定付けるパラメータが線形的な関係にあった事から、修正中心性がエラストマーのメゾ構造の新たな記述子として扱える可能性が示唆された。 以上、今年度は、エラストマーのネットワーク構造を各架橋点に対して定量化し、中心性が応力を決定付けるパラメーターを普遍的に記述できる事を明らかにした。今後、本知見をハロゲン結合性エラストマーに適応し、一軸伸長下で動的に架橋点が移り変わるネットワーク構造をどのように定量化するか検討し、相互作用の役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラジカル重合によるハロゲン結合性エラストマーの合成法を確立した。動的粘弾性測定を行ったところ、ハロゲンの種類を変える事で、弾性率が異なる事が明らかとした。 エラストマーの分子動力学シミュレーションを行い、様々な条件で調製したエラストマーについて、ネットワーク構造を定量化し、一軸伸長への影響を明らかにした。トポロジカルな情報と空間的な情報の両方を取り入れた中心性を導入し、応力を決定付けるパラメータを線形的に記述できる事を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、動的にネットワーク構造が変わるハロゲン結合性エラストマーのネットワーク構造の記述法を確立し、ハロゲン結合性エラストマーに特有な力学物性の発現機構を明らかにする予定である。これまで確立した近接中心性を用いて架橋点を定量化し、ハロゲン結合の強さがどのように一軸伸長下のネットワーク構造の遷移に影響するか調べ、応力の記述に取り組む予定である。 研究計画では、分光法を用いてハロゲン結合の配向性を評価する予定であったが、研究機関が変更となったため、今後の計画では行わない予定である。
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Causes of Carryover |
研究課題の採択後、研究代表者は、名古屋大学→東京大学→九州大学と2回の異動を繰り返した。予定していた研究環境が変わり、実験設備の構築や測定装置の制限により研究計画を見直す必要があった。当初の研究目標を達成するには、研究期間が2年では不足したため、補助事業期間の延長し、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(10 results)