2018 Fiscal Year Research-status Report
親水性POSSフィラーの添加による新規高性能有機-無機ハイブリッド逆浸透膜の創製
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18K14287
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山本 一樹 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 助教 (20633910)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 逆浸透膜 / シルセスキオキサン / 有機-無機ハイブリッド材料 / ゾル-ゲル法 / POSS / 水分離膜 / かご状シルセスキオキサン / 有機架橋型ポリシルセスキオキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題ではケイ素系有機-無機ハイブリッド材料を用いた水分離膜における水透過性の向上を目指して、親水性置換基を有するかご状シルセスキオキサン(POSS)を添加する手法により、高性能な有機‐無機ハイブリッド逆浸透膜の創製を目的としている。 初年度となる本年度では、かご構造の10個の側鎖にそれぞれカルボキシル基を有するかご状シルセスキオキサン(POSS-COOH)を用いてエタン架橋型シルセスキオキサン(BTES-E1)のモノマーとの共存下で重合することにより、ポリマー中にPOSS-COOHのフィラーが組み込まれた逆浸透膜を作製し、そのバルクおよび水分離膜としての性能評価を行った。 具体的には下記の成果が得られた。 ポリマー溶液について動的光散乱による粒径を測定したところ、POSS-COOHの添加の有無に関わらず粒径に大きな変化がないため重合反応自体を抑制あるいは加速させる影響はないことが明らかとなった。コーティングフィルムを調製して水接触角測定を行ったところ、POSS-COOHの添加量の増加(0~20wt%)に従い、接触角は最大12度程度低下する傾向を示し膜の親水化が示唆された。さらに、膜の水透過性試験を行ったところ水透過率は添加量の増加に従い向上する一方で塩阻止率は低下する傾向を示すトレードオフの関係が得られた。膜表面の走査型電子顕微鏡による表面観察からPOSS-COOHの添加量を増やすに従い、数十ミクロンオーダーでの斑点状の明暗差から、次第に枝状へと成長した相分離構造へ成長する様子が確認された。すなわちPOSS-COOHとBTES-E1ポリマーとの互いの相溶性が低いため、膜とした際に2成分が分離しており相溶性の改善が課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していた、フィラーとして用いる親水基を有するかご状シルセスキオキサンは、カルボキシル基を側鎖に持ち10量体を主成分とするかご状シルセスキオキサン(POSS-COOH)を、共同研究者より提供を受けることにより準備した。そこで、モノマーであるビス(トリエトキシシリル)エタン(BTES-E1)に対し、所定量のPOSS-COOHを添加し重合を開始することで、有機-無機ハイブリッド型の逆浸透膜の作製を行った。POOS-COOHの添加量に増加させる応じてバルク状態おける親水化、および逆浸透膜性能に関して水透過性のトレードオフの性能変化が見られた。特に、塩阻止率は低下したものの、水透過性は添加なしと比較して5倍程度増加しており、当初の目標とする水透過性の向上が確認できた。 以上の理由から、本研究は当初の計画通りに進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度検討したPOSS-COOHはカルボキシル基同士での水素結合性が強く、POSS-COOHとBTES-E1ポリマーと相分離が起きていることが走査型電子顕微鏡観察により確認された。逆浸透膜としての利用を想定した場合、よりフィラーが均一に分散した方好ましいためポリマーとフィラー間での相溶性の向上が課題点となった。そこで、今後は相溶性の改善を図るため、以下の内容を予定している。 ①POSS-COOHフィラーの添加量を減少させた場合での検討 ②ベースポリマーを変更し、既報で報告されている2級アミン部位を含むケイ素モノマー(BTES-PA)または現在検討中のピリジンを架橋部位として含むモノマー(BTES-VP)を用いることで、カルボキシル基とアミノ基の中和反応による相互作用や水素結合を利用することで相溶性の改善の検討 さらに次年度以降では、カルボキシル基に代わる親水基として、当初より計画していた水酸基およびアミノ基を有するPOSSをフィラーとした膜の作製と評価を予定している。
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Causes of Carryover |
当初の予定通り、研究費の遂行が進んでいる。次年度使用額の金額として、少額ながら次年度に使用額が生じたものの、引き続き計画通り試薬や物品等の購入および学会発表に関連する旅費等に使用する予定である。
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