2018 Fiscal Year Research-status Report
非平面π共役骨格を活用した結晶性構造体の精密構造制御
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18K14298
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 充朗 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20724959)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 共有結合性構造体 / デヒドロアヌレン / π共役化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,従来とは異なる設計指針に基づく優れた有機半導体の創出を目指し,共有結合性有機構造体(Covalent Organic Framework, COF)と呼ばれる結晶性多孔質化合物の精密構造制御に挑戦するものである.COFは,有機典型元素間の共有結合によって形成される骨格をもつ.特に,共有結合ネットワークが二次元に広がった「2D-COF」では,π共役ユニットがface-to-faceで密に重なるよう多層化する場合が多く,π-πコンタクトを介した電荷キャリアや励起子の輸送に極めて優れた材料となり得る. 一方,優れた電子特性を示す2D-COFを得るためには課題もある.例えば,積層した二次元ネットワークの間には,π電子間の反発を低減するため面内の任意方向に数オングストロームのズレが生じてしまう.このような構造の乱れは,電荷キャリアや励起子の輸送に好ましくない.そこで本研究ではこの課題の解消に向け,非平面型のπ共役ユニットを骨格要素とする2D-COFの構築を検討する.非平面状の骨格要素を用いることで二次元ネットワークの重なりに立体的制約が生じ,従来の2D-COF に見られた面内方向のズレが解消されると考えられる. 今年度はその端緒として,(1)非平面π共役骨格を持つ有機ユニットの合成,および(2)得られた有機ユニットを用いたCOFの合成を検討した.項目1については,屈曲型の環状π共役骨格を持つデヒドロ[24]アヌレン([24]DA)誘導体を合成することに成功した.反応条件の最適化により,COFの合成検討に十分なスケールの生成物が得られている.項目2については,項目1の[24]DA誘導体と1,4-フェニレンジボロン酸との反応により,結晶性多孔質化合物を得ることに成功した.これらの成果は,目的とする優れた半導体特性を示すCOFの実現に向け重要な第一歩である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の検討により,目的とする非平面π共役ユニット([24]DA誘導体)の合成と,それを用いたCOFの合成を達成した.これは,おおよそ申請時の計画通りの進捗である. [24]DA誘導体の合成では,反応経路と反応条件を詳細に検討し,COFの合成に十分なスケールで生成物が得られる条件を確立した.また,対応するCOFの合成についても,比較的高効率で進行する条件を見出した.得られた構造体は,粉末X線結晶構造解析,固体核磁気共鳴測定,赤外吸収測定および吸脱着等温線測定で分析し,目的とする構造と矛盾しない結果が得られている.尚,[24]DAのように柔軟な環状化合物を用いたCOFの合成例はほとんどないため,この成果は合成化学的にも意義深い.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成30年度に合成したCOFについて,より詳細な構造解析を行う.また,異なる非平面型有機ユニットも合成し,それらを用いたCOFの合成についても検討する.特に,イミン結合を連結モチーフとする化合物の合成に注力する. さらに,上記検討でバルク固体として合成することに成功した新規COFについては,数十~数百ナノメートルの膜厚を持つ薄膜として得るための検討も行う.その後,電界効果トランジスタ法や空間電荷制限電流法などで薄膜中の電荷キャリア移動度を系統的に評価し,構造-物性相関について有意義な知見の獲得を目指す.
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Causes of Carryover |
検討が当初計画よりも効率的に進行したこと,および期間中の転任に伴って一時的に研究ボリュームが減少したことにより,化合物の合成や精製に必要な消耗品の支出が予算に比べて少額で済んだことが主な理由である.また,論文投稿に伴う英文査読などに充てることを計画していた予算が,当該年度の論文発表が無かったために支出されなかった.これは,より質の高い論文の発表を狙って,さらに結果を蓄積する判断のためである. 発生した次年度使用額は,合成検討の対象化合物の拡大に伴って必要になる実験用消耗品,および,より積極的な学会発表を行うための必要経費(参加登録費および旅費)に充てる計画である.
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Research Products
(3 results)