2019 Fiscal Year Research-status Report
アンテナ効果と高効率多電子酸化を実現する生体模倣型多孔性金属錯体の創製
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18K14305
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
堀内 悠 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90611418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 多孔性配位高分子 / 可視光応答型光触媒 / 水の酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
無尽蔵な太陽光エネルギーを化学エネルギーへと変換することが可能な人工光合成反応は、現在のエネルギー・環境問題の解決策として有望視されている。その実現に向けては、反応系構築のボトルネックとなっている水の酸化による酸素発生反応の高効率化が求められる。本申請課題では、自己組織化を通して、ボトムアップ的に、かつ規則的高密度に金属酸化物クラスターと有機分子を配列できる多孔性金属錯体(PCP)の有機-無機ハイブリッド骨格に着目し、植物の光合成中心に見られる優れた多電子酸化活性サイトと集光アンテナ系を模倣した構造を一つの固体材料内に構築することで、高い多電子酸化能と光の利用効率を実現する酸素発生触媒の開発を進めている。 2019年度は、PCP材料内における集光アンテナ効果の実現可能性の検証に向けて、光吸収部位としてのビフェニルジカルボン酸とZrクラスターからなるPCPを合成するとともに、PCP細孔内に固定化したクマリン色素へのエネルギー集約を検討した。その結果、発光スペクトル測定を通して、同材料内においてビフェニル部位からクマリン色素へのエネルギー移動が生じていることを明らかにするとともに、エネルギー供与部位の発光スペクトルとエネルギー受容体の吸収スペクトルの良好なスペクトルマッチングが本現象の発現に寄与していることを示した。このように、材料開発とメカニズム解明の両面からPCPを利用する集光アンテナシステムの開発を推進することに成功した。今後は、酸素発生反応に対する光触媒能を有するFe系PCPの電子構造を電気化学および計算化学的側面から解析するとともに、電子構造のマッチングを考慮した材料設計を通して、高い多電子酸化能と光の利用効率を実現する光触媒の構築を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、当初計画の通り、光の利用効率の向上を目指したPCP材料内における集光アンテナシステムの構築を検討した。天然の光合成系では、活性中心の周りに集光性タンパクが高密度に配列されており、高い光利用効率が達成されている。このようなアンテナ構造を光触媒に付与する上で、自己組織化を通して、ボトムアップ的に、かつ規則的高密度に有機分子を配列できるPCPを利用した触媒設計が有効と考えた。そこで、光捕集能を有するエネルギー供与性の架橋性有機配位子としてのビフェニルジカルボン酸を用いたPCPを合成し、次いでエネルギー受容体としてクマリン色素をPCP内に固定化した材料を設計した。その結果、クマリン色素の導入量の増加とともに、ビフェニル部位を光励起した際のビフェニル由来の発光強度が減少し、クマリン色素由来の発光強度が増加する現象の観察に成功した。これは、ビフェニル部位からクマリン色素へのエネルギー移動が生じていることを示唆している。また、この際のエネルギー移動効率は高く、最大で86%に達した。さらに、光吸収波長の異なるクマリン色素を用いるとエネルギー移動効率が減少する結果が観察され、光吸収部位の発光とエネルギー受容体の吸収スペクトルのスペクトルマッチングがエネルギー移動において重要な因子となることが見出された。このように、集光アンテナ効果を示す材料開発を実現するとともに、そのメカニズムを捉えることに成功しており、当初目標の高い光の利用効率を実現するPCP光触媒の開発が順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1年めに多電子酸化反応に適したPCP光触媒の開発を、2年めに高い光の利用効率を実現するPCP光触媒の開発をそれぞれ順調に推進することができているため、最終年度は、これらの知見を組み合わせたPCP光触媒の開発による酸素発生反応の高効率化を検証する。効率的な電子・エネルギー移動を実現する材料設計においては、PCP光触媒の電子構造をより精密に解明、理解することが重要となる。そこで、まず、酸素発生反応に対する光触媒能を有するFe系PCPの電子構造解析を電気化学的および計算化学的解析の両面から実施する。またPCPでは、合成段階において、有機・無機部位の組み合わせを変化させることでクラスターの組成や構造を制御できる。さらに、合成後にポスト化学処理を施すことでクラスター金属種の置換を始めとするクラスター構造のアレンジが可能であることから、これまで有効性を見出してきたクラスターとは異なる構造についても合わせて検討を行い、最適構造の探索を図る。加えて、PCPにおける集光アンテナシステム構築の検証を通して得られた知見であるスペクトルマッチングを考慮した上で、可視光吸収可能な有機リンカーへの展開を進め、高効率な可視光応答型PCP光触媒開発の実現を目指す。
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Research Products
(17 results)