2018 Fiscal Year Research-status Report
構造特性の理解に基づく革新的アルミニウム電解質材料の開拓
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18K14310
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
万代 俊彦 岩手大学, 理工学部, 助教 (20810592)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルミニウム電池 / 電解液 / 塩化アルミニウム / 溶媒和 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミニウム金属電池の実用化には安全性とエネルギー密度の向上が求められており、それには酸化耐性が低く腐食性・大気下での反応性の高いAl2Cl7-をAl3+/Al活性種としたAlCl3系に替わる, 新規電解液の開発が求められる。本科研費研究では, 電気化学反応に関与するAl(III)化学種の構造特性を理解し、『AlCl3フリー電解質』の設計指針を提案すること、そしてアルミニウム硫黄電池の実現可能性を検証することを目的としている。 2018年度は、アニオン性のAl2Cl7-(第一世代)ではなく、[AlCl2(solvent)]+カチオンが電気化学的Al3+/Al活性を示すことが知られているAlCl3-スルホン系電解液(第二世代)に着目し、Al(CF3SO3)3 (Al[TfO]3)やAl[(CF3SO2)2N]3 (Al[TFSA]3)などAl源の異なる種々のアルミニウム電解質について、電気化学特性と構造特性の関係解明に注力した。振動分光や結晶構造解析から得られた構造情報と電気化学活性を詳細に比較し、AlCl3フリー電解液ではAl3+/Al反応における活性種構造および機序がAlCl3系電解液と根本的に異なること、Al-anionおよびAl-ligand間相互作用のバランスが活性発現において重要な因子であることを明らかとした。研究者の先行研究および、今年度の検討により得られたこれらの知見を統合し、AlCl3フリー電解質の設計指針として以下の2点を提案する。(1)電解質中でアルミニウム塩を(完全)解離させること、そして(2)弱配位性溶媒を用いること。この設計指針を基に、2019年度はAlCl3フリー電解質を設計・開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、『AlCl3フリー電解質』の設計指針を提案することを第一の課題として最も重きを置いている。 2018年度の検討により、電解液中のカチオン-アニオンの解離状態が類似でも電気化学活性が著しく異なる系を見出した。AlCl3系電解液を構造的に模倣してもAlCl3を含まない電解液系では電気化学活性が発現せず、このことはClアニオンあるいは[AlnCl3n+1]-アニオンが、「一般的なカウンターアニオン」とは一線を画す特異な性質を有することを示唆している。このような特異な電気化学的金属析出溶解反応は、Grignard試薬からのマグネシウム析出溶解反応と多くの点で類似している。マグネシウム電池電解液はこの10年で飛躍的に進展している。特に申請者は、マグネシウム電池電解液の網羅的検討から、カチオン-アニオンおよびカチオン-溶媒の相互作用のバランスが電気化学活性を決定付けることを見出している。金属および電解液特性の類似性から、同様のアプローチによりAlCl3を脱却した新規電解液系が創出可能と考える。 上述のように、申請者は本研究の根幹ともいえる「電気化学活性種の構造特性」を見出している。課題としてあげている設計指針も提示するにいたっており、この点において、極めて順調に進展している。 電解液について一定の進展がある一方で、硫黄電池に向けた取り組みは進展がないのが現状である。総合して「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は前述の設計指針に基づき、アニオン-カチオン間相互作用の能動的制御を主軸に、高活性アルミニウム電池電解質の創出に向けて研究を推進する。具体的には以下の3つのアプローチを検討する。 (A) 弱配位性アニオン(weakly coordinated anion, WCA)を有する新規アルミニウム塩の開発 (B) ルイス酸-塩基相互作用の協奏による解離促進を利用した電解質創出 (C) アニオンレセプター(分子認識)を利用したアニオン捕捉の電解質適用 アルミニウム硫黄電池の実現可能性の検証も本科研費研究の課題として挙げていたが、電解液開発の進捗および他の金属硫黄電池の研究動向を鑑み、2019年度も電解質開発を主に検討していく。金属硫黄電池はリチウムやナトリウム、マグネシウム系で精力的に研究されているが、もっとも可能性のあるリチウム硫黄電池すらも研究開発段階にある。アルミニウム硫黄電池への新規電解液適用可能性を検証するためには、硫黄電極の作製・最適化など多くの労力を要する。AlCl3フリーかつ高活性な電解液は未だ一切の報告がなく、これを世界に先駆けて創出することがもっとも重要な課題と考える。
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Research Products
(1 results)