2018 Fiscal Year Research-status Report
Li二次電池負極性能を最大化する黒鉛エッジ面の化学構造の解明
Project/Area Number |
18K14312
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
石井 孝文 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50750155)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素材料 / 黒鉛 / リチウムイオン二次電池 / 表面分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒鉛エッジ面の化学構造中には,①含酸素官能基,②エッジ水素,③構造欠陥が存在する.この3つの要素がLiB特性(出力,温度特性,容量)とSEI形成に与える影響を本研究で明らかにすることが,本研究の目的である.この目的を達成するために,黒鉛エッジ面の化学構造制御手法の確立が必要不可欠となる.エッジ面の化学構造を制御するためには,任意の表面処理によってエッジ面の化学構造がどのように変化するのか知る必要がある.そのためには,表面処理の選択も重要な要素であるが,最も重要なことは,表面処理によって変容したエッジ面を精密に定性分析する技術である.そこで,当該年度では,表面処理によるエッジ面の化学構造変化を精密に評価する手法の開発を行った.具体的には,重水素置換昇温脱離分析(重水素置換TPD)によって官能基の定性を行った.重水素置換TPDでは,含酸素官能基のプロトン性水素を重水素標識することで,カーボン表面のフェノール性水酸基とエーテルを分離分析することが可能である.本分析では,カーボン表面の官能基を11種の官能基に細分化し,定量することができる.カーボンブラック,活性炭,活性炭素繊維,黒鉛を試料として,気相酸化処理,液相酸化処理を施した表面処理試料を調製した.重水素置換TPDを用い,表面処理試料のエッジ面の精密定性を試みた.その結果,表面処理の種類,強度がエッジ面の化学構造形成に大きく影響することが分かった.当該年度では,表面処理黒鉛試料の調製,ならびにそのエッジ面の化学構造の精密分析を行った.この知見をもとに,次年度では,表面処理黒鉛試料のLIB特性評価を進め,エッジ面の量と化学構造がLiB負極性能に与える影響を評価し,LiB黒鉛負極の最適なエッジ面状態を明確に示すことを目的として研究を実行する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で最も重要かつ困難と考えていた,黒鉛エッジ面の化学構造の精密分析手法を,当該年度で開発することができた.この手法は,重水素でエッジ面の官能基を標識し,フェノールとエーテル,エッジ水素を区別することを可能とするものである.本手法によって黒鉛エッジ面の実際の化学構造をはじめて評価可能であり,当該年度において,今後の研究を大きく飛躍させる成果が得られたものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では,表面処理黒鉛試料の調製,ならびにそのエッジ面の化学構造の精密分析を行った.この知見をもとに,次年度では,表面処理黒鉛試料のLIB特性評価を進め,エッジ面の量と化学構造がLiB負極性能に与える影響を評価し,LiB黒鉛負極の最適なエッジ面状態を明確に示すことを目的として研究を実行する予定である. 具体的には以下の推進方策を予定している.黒鉛エッジ面の化学構造制御には粉砕処理,熱処理,化学的表面処理を併用して用いる.黒鉛試料の粒径が小さいほどエッジ面は増加するため,粉砕処理によって黒鉛試料粒子の粒径を制御し,エッジ面の量を制御する.粉砕処理にはボールミルを用いる.化学的表面処理ではエッジ面の質,特に含酸素化合物とエッジ水素の質や量を制御することが可能である.これらの処理によって得られた黒鉛エッジ面の化学構造を重水素置換TPDを用いて精密に分析する. 以上に示した手法によりエッジ面を制御した黒鉛試料について,LiB負極性能を評価する.また炭素構造分析としてXRD分析,Raman分光,電子顕微鏡観察を行う.LiB負極性能の評価項目として,黒鉛負極のACインピーダンス測定,温度-出力特性,充放電特性,不可逆容量の測定を行う.このようにして,エッジ面の量と化学構造がLiB負極性能に与える影響を評価し,LiB黒鉛負極の最適なエッジ面状態を明確に示す.
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Causes of Carryover |
黒鉛エッジ面の精密分析手法の開発に時間を要したことによって,LIB特性評価に関わる研究に充当する研究費を次年度に繰り越したため,次年度使用額が生じた. 次年度ではLIB特性評価に関わる研究を施行するため,次年度繰越研究費を使用し,研究を行う予定である.
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Research Products
(5 results)