2018 Fiscal Year Research-status Report
Addition effects of halogen compounds on electron transport properties of lead-free perovskite solar cells
Project/Area Number |
18K14316
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
白幡 泰浩 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 助教(特定雇用) (10791543)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非鉛ペロブスカイト太陽電池 / (CH3NH3)3Bi2I9 / 熱処理温度 / NH4I添加 / 封止型ペロブスカイト太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,(1)添加剤として用いるハロゲン化合物に含まれる金属イオンの価数が非鉛ペロブスカイト太陽電池の電子輸送特性に与える影響の解明と,(2)ハロゲン化合物添加により改良された非鉛ペロブスカイト太陽電池が電子輸送特性に与える影響の解明を目的としている.平成30年度は,①ビスマス(Bi)を含む非鉛ペロブスカイト太陽電池用光吸収層材料の作製条件の最適化を行った.その結果,研究代表者が実績を有する「温風アシストスピンコート法」を採用することで,不純物相を含まない,単相の(CH3NH3)3Bi2I9薄膜を得ることに成功した.また,上記の作製法を用いて(CH3NH3)3Bi2I9太陽電池の作製条件を最適化した結果,熱処理温度と時間がそれぞれ130 ℃,30分という条件にて,本研究における最大変換効率が得られた.さらに,本研究課題で得られた光電変換特性は再現性が高いことも確認している. 本研究課題に関連して,②非鉛ペロブスカイト太陽電池の表面形態の改良をするための添加剤としてヨウ化アンモニウムに着目し,初期段階の研究として,鉛ペロブスカイトCH3NH3PbI3-xClxにヨウ化アンモニウムを添加した太陽電池セルを作製した.その結果,20 mg/mL程度のヨウ化アンモニウムをCH3NH3PbI3-xClx前駆体溶液に添加することで,(a)太陽電池の光電変換特性の向上,(b)CH3NH3PbI3-xClx薄膜の(100)面配向,および(c)CH3NH3PbI3-xClx薄膜の表面形態の変化を確認した.さらに,③過渡電流過渡電圧測定用の太陽電池セルの構造及び正孔輸送材料の検討を行った.その結果,色素増感太陽電池の研究で広く採用されている封止構造と,初期のペロブスカイト太陽電池の研究で用いられているヨウ素系電解液を採用することで,測定に使用可能な太陽電池セルの完成とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(CH3NH3)3Bi2I9太陽電池の作製条件を最適化することで,これまでに報告されている(CH3NH3)3Bi2I9太陽電池の光電変換特性に匹敵する性能と,高い再現性を得ることに成功している.本研究課題では,ハロゲン化合物の添加が非鉛ペロブスカイト太陽電池の電子輸送特性に与える影響を丁寧に調査・検討する必要があることから,本研究で得られた成果は,大変意義のある成果であると考えている. また,これまでに,ヨウ化アンモニウムは鉛ペロブスカイト太陽電池の光電変換効率向上に対して顕著な効果が得られないという研究報告が散見されていた.しかし,微量のヨウ化アンモニウム添加によって鉛ペロブスカイト太陽電池の光電変換特性の向上のみならず,薄膜の配向性と表面形態を制御可能にした本研究成果は,非鉛ペロブスカイト太陽電池にも展開可能であり,本研究課題にて詳細を調査/検討する価値が十分にあるものと考えている. 一方,本研究課題にて,現在のペロブスカイト太陽電池の研究で広く採用されているセル構造および正孔輸送材料では過渡電流過渡電圧測定が困難という課題が見つかった.これについては,色素増感太陽電池の研究で広く採用されているセル構造と,初期のペロブスカイト太陽電池の研究で用いられているヨウ素系電解液を採用することで,課題解決に至ることができている. しかしながら,(CH3NH3)3Bi3I9以外に予定していたスズやゲルマニウムを含む非鉛ペロブスカイト太陽電池材料の作製条件の最適化に時間を要したことが影響し,平成30年度実施予定であった研究項目(1)についての調査が一部積み残された. 研究の進捗状況としては,本研究課題を解決するために必要な要素技術の確立ができたという点では評価できるものの,平成30年度に実施予定であった研究に一部積み残しがあったいう点でやや遅れていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,今年度の研究で得られたヨウ化アンモニウムの添加による光電変換特性の向上,あるいは配向性や表面形態の変化などが,(CH3NH3)3Bi3I9太陽電池においても発現することを確認し,過渡電流過渡電圧測定による電子輸送特性評価を実施する予定である.これに加え,今年度実施できなかった研究項目(1)と,令和元年度に実施予定の研究項目(2)について早急に実施する予定である. 一方で,研究代表者は平成31年3月末で信州大学での任期が満了し,同年4月1日から香川高等専門学校の一般教育科に異動した.しかし,香川高等専門学校は信州大学と同等の設備を有していないため,研究が当初の研究計画通りに進まない可能性がある.これについては,本研究の計画書にも記しているように,太陽電池セルの光電変換特性および電子輸送特性を評価する環境を有している信州大学と,太陽電池セルの光電変換特性および微細構造解析の環境を有している滋賀県立大学での実施を検討している.
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Causes of Carryover |
真空蒸着装置に搭載している電離真空計の表示器を中古で購入したことと,ガラス器具や基板といった消耗品をメーカー価格よりも安価で購入することができたため,次年度使用額(70,000円)が生じたものと考えている。 次年度使用額については,研究代表者が信州大学から香川高等専門学校に異動したことに伴う,真空蒸着装置および実験器具の移設費に充てる予定である.
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