2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of Two-step Water Splitting Systems by using Polyoxometalate
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18K14321
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 修 京都大学, 工学研究科, 助教 (40801303)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バナジウムの価数変化 / 新規レドックス対 / 酸化還元電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は,高効率二段階励起型可視光水分解系の構築に向けて,様々なバンド構造を有する光触媒系に対して,異なる酸化還元電位を有する新規レドックス対を開発することにある.平成30年度は,ポリオキソメタレート材料が有するレドックス能に着目し,本水分解系に適用可能なポリオキソメタレート材料の開発と展開を最優先課題として位置づけた. Keggin型へテロポリオキソメタレート([XMxOy]n-)に着目し,中心元素(X),骨格元素(M),欠損部位への導入遷移金属(M’)を変化させ,その酸化還元挙動および光吸収などの物性と,水分解効率の関係を系統的に検証した.平成30年度の成果として,申請時に挙げた11種類のポリオキソメタレートのうち,計9種のポリオキソメタレートに関して合成に取り組み,これらのうち,骨格の欠損部位にVを導入した3種類のポリオキソメタレート(SiW11V,BW11V,PW11V)が,反応溶液のpHを適切に制御することによって,二段階励起型水分解のレドックス対として安定に機能することを見出した(投稿準備中).これら3種のポリオキソメタレートは,可視光領域の光吸収特性はほぼ同様であることに対して,Vの価数変化に対応する酸化還元電位が異なることを電気化学測定により明らかにしており,本申請課題の主たる目的の一つである,異なる酸化還元電位を有する新規レドックス対の開発および,光触媒のバンド位置と酸化還元電位の検証に結びつく,重要な成果といえる.一方,合成を試みたポリオキソメタレートのうちSiW11FeおよびZnW11Mnは,反応溶液中の安定性などに課題を有し,レドックス対としての適用が困難であることも明らかにした.得られた知見を基に,申請時に挙げたポリオキソメタレート材料の選定を行うこともある程度可能となり,水分解効率の関係の検証を継続的に進める土台を得たと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究成果によって,二段階励起型水分解のレドックス対として機能するポリオキソメタレート材料の展開を行うに至っている.申請時の目的の1つである,様々なバンド構造の光触媒系に対して,異なる酸化還元電位を有する新規レドックス対を適用するという項目に向けて,進歩があったといえる.平成30年度の成果によって得た新規レドックス対を含めると申請者はこれまでに,5種類のポリオキソメタレートを用いて二段階励起型水分解を実証しており,これらのポリオキソメタレートの酸化還元電位はいずれも異なることから今後,他の固体光触媒系を適用することによって,継続的な進歩が期待できる.ただし,本申請課題の他の主たる目的の1つである,レドックス対として適切なポリオキソメタレートの設計と開発指針の確立に向けては,未だ知見が不足している状況にある.この点に関して申請者は,光触媒材料表面におけるポリオキソメタレートの吸着形態および,光触媒表面における適切な助触媒を検討することによって,光触媒-ポリオキソメタレート間の電荷移動に関する知見を得ることにより,レドックス対として適切なポリオキソメタレートの構造に関してより具体的な指針を得られると考えており,現在邁進している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として,大きく2つ考えている.1つ目は,レドックス対として適切なポリオキソメタレートの設計・開発指針の確立に関する知見を得ることに焦点をあてる.本水分解系において,効率的な光触媒反応を進行させうる鍵の1つは,ポリオキソメタレートの骨格に導入した遷移金属の価数変化を,酸素生成系あるいは水素生成系において,いかに速やかに起こすか,という点が重要である.光吸収によって生じたキャリアによる還元あるいは酸化は,光触媒表面(あるいは助触媒表面)で起こる反応であることから,光触媒とポリオキソメタレート間のキャリア移動に関する考察が必須であり,ポリオキソメタレートの吸着形態を明らかにすることが,1つの重要な課題になると考えている.また,ポリオキソメタレートの還元あるいは,酸化を促進しうる助触媒を検討することによって,両者の知見を統合することにより,レドックス対として適切なポリオキソメタレートの構造に関して,吸着部位の観点から,より具体的な指針を得られると考えている. 推進方策の2つ目は,二室型セルを用いた気体(水素と酸素)の分離生成系の構築である.申請者は,二室型セルを用いた光電気化学測定に関する知見があり,同様のセルを用いて,水素生成系と酸素生成系を分離することによって,これが可能となると考えている.上述した,ポリオキソメタレートの還元(酸素生成系)または酸化(水素生成系)を促進する反応サイト(助触媒)の選定と構築に関する知見を統合し,高効率気体分離生成の実証を目指す.
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Causes of Carryover |
平成30年度,研究を進めていく上で,想定していた実験よりも先に明らかにしておきたい実験が増えた結果,来年度,次のステップとして想定している物性評価を行うために,備品を購入させて頂きたいと考えている.
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