2018 Fiscal Year Research-status Report
ムライト型結晶構造体を基軸とするアンモニア燃焼触媒の開発と特性解明
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18K14326
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
日隈 聡士 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (70714012)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アンモニア / 燃焼触媒 / 酸化銅 / 白金 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アンモニア(NH3)はカーボンフリーな石油代替燃料として注目されているが、燃焼開始温度の低下とN2O/NOx生成抑制が求められる。これまで採択者は選択的NH3触媒燃焼に着目し、本年度では、更なるNH3低温燃焼と低N2O/NO選択性の両立を目的として二元系CuOx-Pt/Al2O3を調製し、そのNH3触媒燃焼特性を評価した。 ムライト結晶構造体の一構成材料であるAl2O3担体にCu(NO3)2および[Pt(NH3)2(NO3)2]を、共含浸(CuOx-Pt/Al2O3)あるいは逐次含浸後、空気中600℃, 3hで焼成し、調製後の担持触媒を得た。得られた触媒は耐熱性を評価するため空気中900℃で100h熱処理した(900℃)。キャラクタリゼーションにはX線回折(XRD), 蛍光X線(XRF), 光電子分光法(XPS), X線吸収微細構造(XAFS), 電子顕微鏡(TEM)、ガス吸着等を用いた。NH3触媒燃焼特性は流通反応装置を用いて昇温法で評価した。 XRD測定の結果、いずれの調製法で得た担持触媒でも、金属PtとAl2O3に起因する回折線が認められたが、CuOxに起因する回折線は認められなかった。一方、熱処理後の触媒ではCuAl2O4が出現した。金属Ptの回折線にScherrer式を適用して計算すると、CuOx/Pt/Al2O3のPt粒子径は熱処理前後でそれぞれ15 nmと33 nmであった。熱処理前後の二元系触媒の中でも、CuOx/Pt/Al2O3が比較的高いNH3燃焼活性を示した。生成物選択性に関して、CuOx/Pt/Al2O3と一元系触媒を比較すると、NO選択性に差はあまり認められないが、N2O選択性はPt > CuOx/Pt > CuOxの序列であり、優位性が認められた。以上の2018年度の研究成果は、査読論文2報、国際会議発表3件、特許1件として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018度の目標は①触媒開発では『ムライト担体調製』『湿式法担持触媒調製』、②触媒解析では『結晶・構造解析』『酸性質解明』、③反応評価では『触媒反応試験』『耐熱性検討』になり、相関関係を考察して最終的にN2選択率99%以上を達成することである。 ムライト担持CuOx触媒は湿式含浸法によって調製した。調製した触媒はXRD・XRF測定で結晶構造・組成比を確認後、昇温脱離法(NH3/NO-TPD)によってその酸・塩基性質(量)を調べた。詳細な酸性質の有無については、ピリジンを用いた真空中FT-IRによって検討した。TEM/EDXを用いてCuOx等の触媒の析出・分散状態を観察した。大気非曝露セルを用いるXPS測定によって、NH3燃焼反応後の状態を保持した触媒表面の酸化状態を調べた。反応評価については、燃焼活性・生成物選択性に影響を及ぼす触媒上のNH3吸着種や反応中間体、ならびにNH3/O2分圧依存性・部分次数や反応速度等を調べた。相関関係考察については、担持CuOx触媒を用いたNH3燃焼反応は、反応初期ではNH3と格子酸素が反応、次に副生したNOと吸着NH3が反応する二段階で進行することを明らかにし、触媒特性が反応特性に強く依存することを明らかにした。以上の検討により、CuOx/Pt/Al2O3触媒がNH3燃焼反応に対して高活性かつ、高N2選択性を示すことを明らかにし、低温域でのN2選択率は99%以上を達成した。 これらの2018年度の成果は、同年に査読論文2報、国際会議発表3件、特許1件として報告した。加えて、将来的に国際共同研究を検討している海外研究者を採択者の所属機関に招待し、講演会を開催した。国際的かつ多方面から成果向上に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実用化を目指したNH3燃焼触媒の研究開発と特性解明を進める。高濃度NH3ガスを空気によって浄化する反応器とハニカム触媒を調製する。調製後は、反応試験を検討し出口側のガス濃度プロファイルを測定する。また、実用化されているNH3燃焼システムは、『ガス分解式』、『スクラバ式』、『燃焼除害式』、『触媒燃焼式』である。『触媒燃焼式』は工場等から排出される高濃度NH3を浄化する大型で設置型のシステムである。一方、触媒を使用しない『ガス分解式』は、設備サイズは小さいが700 ℃以上の高温が必要となる。これらに対して『小型な触媒燃焼式』といえば、自動車排ガス浄化触媒が挙げられ、大気汚染を防ぐ重要な技術になっている。しかし、自動車の排ガスには複数種の成分(CO/HC/N2O/NO/NH3等)が含まれており、NH3のみの浄化触媒は開発されていない。すなわち、本申請のNH3触媒燃焼システムに類似する研究開発は国内外で検討されていない。そこで今後は、エネルギーキャリアならびに自然冷媒として使用されているNH3の現地回収・浄化を想定した『触媒燃焼浄化装置開発の基礎研究』を進める。 今後の目標は、これまで開発した触媒を使用して、高い熱伝導性を有するハニカム構造化する。NH3をN2へと高効率に浄化するため、触媒の最適化等を行う等。NH3浄化触媒燃焼装置を試作するため、反応管・配管・温度調節器・ヒーター等の部品と材料を選定して組み合わせる。装置は全国各所で使用できるように『AC 100V』電源にする。試作した触媒燃焼浄化装置にNH3/N2O/NO濃度分析装置を接続し、実用を想定したNH3冷媒の浄化試験を実施して生成物選択性を評価する。工場規模のNH3/N2O/NO排出規制濃度『10 ppm以下』を目標とする。以上の目標に到達し、最終目標『高性能NH3触媒燃焼浄化装置開発』を達成する。
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Causes of Carryover |
同年、学内予算に採択され、出費が抑えられたため。
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