2019 Fiscal Year Research-status Report
ムライト型結晶構造体を基軸とするアンモニア燃焼触媒の開発と特性解明
Project/Area Number |
18K14326
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日隈 聡士 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70714012)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アンモニア / ムライト / 燃焼触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
NH3はCO2を排出しない石油代替燃料として近年注目されており,ガスタービンや工業炉等への応用研究が行われている[1,2].一方,NH3は有害かつ難燃性であり,燃焼によって熱力学的に生成するthermal NOx濃度は低いが,速度的にfuel NOxやN2Oの生成反応が優位となる問題点を有する.そのため,NH3を燃焼器に応用するには燃焼開始温度の低下と無害なN2への選択的燃焼ならびに排気浄化が求められる.このようなNH3燃料の課題を解決するため,われわれは触媒燃焼法に着目した. これまで,NH3を低温域から燃焼可能で低N2O/NOx選択性を示す金属酸化物で構成される触媒を開発してきた[3].しかしながら,NH3燃焼反応完結後(高温域)でNOが生成する問題が解決できていない.そこで本研究では,燃焼反応における酸素(O2)濃度をNH3分解領域まで下げるNH3-リッチ(rich)条件の燃焼反応を検討した.様々な担持触媒を合成し,そのNH3-rich条件の燃焼反応特性を評価した. 種々の担持触媒を合成し,そのNH3-rich条件の燃焼反応特性を評価したところ,比較的高いO2分圧(λ=0.90)では,Cu/3A2Sが高活性とN2選択性を両立し,NO/N2Oの生成をほとんど抑えた.λ=0.75では,Cu, Pt, Rh/Al2O3が高活性と高N2選択性を示した.中でも,Cu, Pt/Al2O3が他の遷移金属の中でもそれらを両立した.これに対して,λ=0.60ではIr/Al2O3が高活性・低N2O/NO選択性を示した.以上の結果は,NH3分解反応とは異なる傾向を示したことから,O2の影響ならびに触媒構造や酸化状態の違いが要因であると示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は①触媒開発では『ムライトの3Al2O3・2SiO2の調製』『担持触媒調製』、②触媒解析では『局所構造解析』『酸化状態解析』、③反応評価では『酸素濃度依存性検討』になり、300℃以下でNH3燃焼が開始し、N2選択率99%以上を達成することである。 3Al2O3担持CuOx触媒は湿式含浸法によって調製した。調製した触媒はXRD測定で結晶構造を解析し、TEM/EDXを用いて担体やCuOx等の触媒の分散状態を分析した。XPS測定によって、NH3燃焼反応前後の酸化状態を調べた。反応評価については、NH3/O2濃度依存性を検討して燃焼活性・生成物選択性の変化を確認した。相関関係考察については、担持CuOx触媒を用いたNH3燃焼反応は、反応初期ではNH3と格子酸素が反応、次に副生したNOと吸着NH3が反応する二段階で進行することを明らかにした。以上の検討により、CuOx/3A2S触媒がNH3燃焼反応に対して高活性かつ、高N2選択性を示すことを明らかにし、低温域でのN2選択率は99%以上を達成した。 これらの本年度の成果は招待講演2件、国内会議発表2件として報告し、査読論文1報投稿中でおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、エネルギーキャリアならびに自然冷媒として使用されているNH3の現地回収・浄化を想定した『触媒燃焼浄化装置開発の基礎研究』を進める。NH3を空気によって浄化する反応器とハニカム触媒を調製する。調製後は、反応試験を検討し出口側のガス濃度プロファイルを測定する。触媒の最適化等を行う等。NH3浄化触媒燃焼装置を試作するため、反応管・配管・温度調節器・ヒーター等の部品と材料を選定して組み合わせる。装置は全国各所で使用できるように『AC100V』電源にする。試作した触媒燃焼浄化装置にNH3/N2O/NO濃度分析装置を接続し、実用を想定したNH3冷媒の浄化試験を実施して生成物選択性を評価する。工場規模のNH3/N2O/NO排出規制濃度『10 ppm以下』を目標とする。以上の目標に到達し、最終目標『高性能NH3触媒燃焼浄化装置開発』を達成する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の影響により予定していた出張などが不可になったため。
|