2018 Fiscal Year Research-status Report
Metallo-chemogenetics to decode intracellular signaling networks
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18K14333
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
窪田 亮 京都大学, 工学研究科, 助教 (00753146)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 金属錯体化学 / Gタンパク質共役受容体 / 動物個体 / in vivo |
Outline of Annual Research Achievements |
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、生細胞表層に存在する細胞膜受容体である。GPCRは生物個体内において、神経活動・免疫等の重要な生理機能を担うため、その機能解明は生物学・生理学において重要であるだけでなく、創薬への応用が期待される。しかしながら、生体内では多種多様な受容体及び細胞種が混在していることから、ある特定の細胞における狙ったGPCRの機能を調べることは未だ困難である。そこで本研究課題では、金属錯体化学と遺伝子工学を組み合わせたCoordination ChemogeneticsをGPCR、特に活性制御が困難なClass A GPCRに適用することを目的とした。標的GPCRにHis tagを導入した変異型GPCRを作成し、標的GPCRのアゴニスト及びNiNTA錯体を連結したMetal agonist conjugate (MAC)を作用させることで、GPCR-アゴニスト・HIs tag-NiNTAの二点相互作用により標的となるclass A GPCRを活性化させることに成功した。この方法をCoordination tetheringと命名し、多種のclass A GPCRに適用でき、かつ初代継代細胞に適用可能なことを示した。 また一方で動物個体での膜受容体の可視化・制御を目指した研究も行った。その結果、動物個体内においてガン腫瘍のマーカーとして機能する内在的な膜受容体を選択的に化学修飾できることをwestern blotting解析により証明した。興味深いことに、ガン腫瘍以外の組織ではほとんどラベル化が進行しなかったため、マウス体内における組織選択性が高いことも明らかとなった。またラベル化したガン腫瘍を摘出し、凍結切片としたのち共焦点レーザー顕微鏡観察を行ったところ、ラベル化蛍光が観察され、望み通り内在性タンパク質を可視化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、考案したCoordination tetheringがclass A GPCRを活性化できることを示した。実際に、HEK293, CHO細胞のようなモデル細胞系だけでなく、グリア細胞と言った初代培養細胞にまで適用できることを示した。この結果は、coordination tetheringが脳機能・神経機能と言った実際の生理機能解析にまで発展できると期待される。この結果は当初の計画通りに進行している。 また当初予期していなかった新たな展開として、動物個体(担ガンマウス)内での内在性タンパク質の化学修飾・可視化に成功した。近年、動物個体内におけるタンパク質の可視化・機能制御は世界的に活発に研究が進んでいる分野である。これまでの世界的な方法論では、genetic code expansionやCRISPR-Cas9システムによる遺伝子工学が必須であったが、本手法では純粋な化学的手法のみを必要とすることから、生体内のバランスを崩すことなくタンパク質の可視化・機能制御が可能となると期待される。こうした予期しなかった展開を踏まえて、本研究は「当初の計画以上に進展している」と区分した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度では、2018年度の結果を踏まえて「動物個体内で使用できる化学的技術の発展」に焦点をおき、研究を進める。具体的には、(1) Coordination tetheringを動物個体内で使用できる手法へと昇華する、(2)動物個体内でのタンパク質ラベル化に関して詳細な知見を得ることを目的とする。 Coordination tetheringに関しては、金属錯体系を利用しないペプチドタグ-プローブペアへと展開することで、金属イオン・金属錯体の毒性を低減したシステムへと展開する。また構築出来次第、これまでと同様に概念提唱実験を行ったのち、ウイルス発現ベクターを利用した組織スライスやマウス個体への実験へと展開する。 動物個体内でのタンパク質ラベルに関しては、現在のところ全く詳細な知見を得られていないため、今後分子デザインやマウス体内における動態解析を詳細に検討する。またマウス体内におけるラベル化に関してはまだ一例しか成功していないため、他のタンパク質へと拡張することで本系の一般性を主張する。さらにラベル化したタンパク質を利用したバイオセンサーを構築することで、マウス体内における薬物動態・環境変化をリアルタイムにモニタリングできるシステムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
2018年度では、消耗品(有機合成試薬・遺伝子工学試薬・細胞培養試薬)を主に計上していたが、研究が予想外に上手く進んだため、消耗品についてそこまで使用する必要がなくなったため、次年度に繰越を行った。 2019年度では、有機合成試薬・遺伝子工学試薬・細胞培養試薬に足してマウス購入費・飼育費に費用が必要となるため、前年度と同様に主に消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(18 results)