2018 Fiscal Year Research-status Report
ペプチド-薬物複合体:分子標的ペプチドを用いた効率的ドラッグデリバリーシステム
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18K14339
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
道上 雅孝 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60802428)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / ペプチド-薬物複合体 / ヒト血管内皮増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、抗体分子が抱える課題を克服するために、低分子量と高機能を両立した抗体様分子を開発することである。申請者は抗体様分子として、安定なヘリックス-ループ-ヘリックス構造を持つ分子標的ペプチドの開発を行っている。本ペプチドは低分子量であるにも関わらず、抗体と同等の結合活性を示し、血清中でも高い安定性を示す。本研究では、さらにそれを高機能化し、分子標的ペプチドに抗がん剤を修飾した「ペプチド-薬物複合体」を開発する。これは、抗体医薬品の問題点を一挙に解決し、これに代わる革新的医薬品の開発に繋がる喫緊の課題である。 ペプチド-薬物複合体が、がん細胞の増殖を抑制できるか明らかにし、新しい作用機序の分子ツールとなるか検証する。平成30年度の1年間においては、蛍光標識したヘリックス-ループ-ヘリックス構造ペプチドを取得することを目的とした。これは、次年度において、蛍光標識したペプチドをがん細胞に添加し、細胞内に取り込まれるか、共焦点レーザー顕微鏡やフローサイトメーターを用いて調べるためである。 分子標的ペプチドは、Fmoc 固相合成法により合成し、その後、N末端のシステイン残基に蛍光分子(Cy5)をマレイミドを介して導入した。得られたペプチドをMALDI-TOF-MSで質量分析を行ったところ、m/z = 5502.981の実測値を得た。[M+H]+の計算値は5502.953であるため、目的の蛍光標識ペプチドが合成されたことを確認した。また、逆相HPLCにて純度を測定したところ、95%であった。収量は10mgであり、次年度の研究を実施するにあたり十分量獲得できた。今後は、蛍光標識体の分子標的ペプチドをさらに複数種類合成し、これらが標的タンパク質に結合するか確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成30年度の目標は蛍光標識したヘリックス-ループ-ヘリックス構造ペプチドを5種類以上取得することである。各ペプチドの取得量は、10 mg 以上を目標値とした。これまでに1種類のヘリックス-ループ-ヘリックス構造ペプチドの合成が終了しており、蛍光標識反応も問題なく進行した。残りの4種類については、合成可能だが水溶性が低く精製困難なペプチドであったり、アミノ酸のカップリング反応の収率が低く、収量が目標値より大幅に低かったため蛍光標識には至らなかった。次年度に実施予定の活性評価において、現在のところ候補ペプチドが1種類しかないため次年度も引き続き、ペプチドを合成する必要があると判断し、進捗状況を遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はペプチド合成の条件を改善し、十分量の試料を得ることに注力するとともに、ペプチド合成を外注することで円滑な研究推進に努める。十分量のペプチド試料が得られた際には、随時、次年度に実施予定の研究計画を遂行する。具体的には、蛍光標識した分子標的ヘリックス-ループ-ヘリックス構造ペプチドが、標的タンパク質であるヒト血管内皮増殖因子A(VEGF)を介してヒト血管内皮細胞内に取り込まれるか評価する。また、細胞取り込みが確認できたペプチドについては、VEGF依存的な取り込みなのか、その取り込みメカニズムを明らかにする。 フローサイトメーターを用いて、細胞内に取り込まれたペプチドの量を定量すると共に、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、ペプチドに標識した蛍光分子(Cy5)の輝点が細胞内で観察できるのか、また、VEGFに標識した蛍光分子(Alexa488)の輝点と重なり共局在しているかを観察する。ドラッグデリバリーの観点から、どの経路でペプチドが細胞内に取り込まれるのか、細胞内ではどの細胞小器官に集積するのかを明らかにすることも重要であると考えている。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究目的は分子標的ペプチドを5種類(各10mg)合成することである。しかしながら、予定していた目標値に到達しなかったため、次年度使用額が生じた。そこでペプチド合成を効率よく実施するため、次年度ではペプチド合成の外注を検討する予定である。ここで発生するペプチド合成の外注費用は当初の計画では計上していなかったため、次年度の使用額は予定より多額となる。
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