2020 Fiscal Year Research-status Report
ペプチド-薬物複合体:分子標的ペプチドを用いた効率的ドラッグデリバリーシステム
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18K14339
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
道上 雅孝 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60802428)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、抗体分子が抱える課題を克服するために、低分子量と高機能を両立した抗体様分子を開発することである。申請者は抗体様分子として、安定なヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)構造を有する分子標的ペプチドを開発している。本ペプチドは低分子量であるにもかかわらず、抗体と同等の結合活性を示し、血清中でも高い安定性を示す。本研究では、HLH構造を有する分子標的ペプチドを高機能化し、分子標的ペプチドに抗がん剤を修飾した「ペプチド-薬物複合体」を開発する。これは、抗体薬品の問題点を一挙に解決し、これに代替する革新的医薬品の開発に繋がる喫緊の課題であり、ペプチド-薬物複合体が、がん細胞の増殖を抑制できるか明らかにし、新しい作用機序の分子ツールとなるか検証する。これまでに、蛍光標識したHLH構造ペプチドが、がん細胞に取り込まれるか、共焦点レーザー顕微鏡やフローサイトメーターを用いて調べた。蛍光標識した分子標的ペプチドは、Fmoc固相合成法により合成し、その後、N末端のシステイン残基に蛍光分子(Cy5)をマレイミドを介して導入した。本ペプチドをVEGF存在下で各がん細胞へ添加すると、複数の細胞株において、ペプチドの内在化が確認できた。また、ペプチドに抗がん剤を修飾したペプチド-薬物複合体を合成した。そして、表面プラズモン共鳴法により、ペプチド-薬物複合体がVEGFに結合することを確認し、薬物修飾によりHLHペプチドのVEGFに対する結合活性が損なわれないことを明らかにした。今後はペプチド-薬物複合体の抗腫瘍活性を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の通り、概ね順調に進展している。ペプチド-薬物複合体の、がん細胞に対する増殖阻害活性を評価する前に、確認実験を実施した。確認実験は、細胞株として、VEGF受容体を高発現しているヒトの正常細胞:臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を利用した。その結果、ペプチド-薬物複合体はHUVECの増殖阻害活性を示した。このことから、ペプチド-薬物複合体が、がん細胞に対しても増殖阻害活性を示すことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、VEGF/VEGFR相互作用を介して細胞内へ移行するVEGF標的HLHペプチドの開発と、本ペプチドに抗がん剤を修飾したペプチド-薬物複合体の合成に成功している。今後は、ペプチド-薬物複合体のがん細胞に対する増殖抑制効果を明らかにしていく。また、薬物の細胞内送達の効率を上げるため、ペプチドと薬物の間のリンカーについて、最適化研究を進める。
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Causes of Carryover |
複数の候補ペプチドを用いて、ペプチド-薬物複合体を合成する計画であったが、ペプチド-薬物複合体を合成するための基準を満たしたHLHペプチドが1種類のみであったため、未使用額が生じた。そこで、より薬物送達効率の高い分子標的ペプチドを設計するため、薬物とペプチドの間のリンカーについて、最適化研究を実施するということを新たに計画した。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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