2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14352
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斉藤 毅 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (80609933)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オレキシン / 睡眠覚醒 / 作動薬 / ケージド化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経ペプチド「オレキシン」の覚醒安定化機序の理解を目的とし、オレキシンの活性を任意の部位、タイミングで制御することができる分子ツールの開発を行うものである。本年度は、我々のグループでそれぞれ独自に開発したオレキシン受容体作動薬と光ケージング基AS400のハイブリッド分子の設計、合成を行った。 オレキシン受容体作動薬は酸性プロトンを保護基で置換することで失活することが分かっており、本官能基にAS400基および比較対照としてニトロベラトリル(Nv)基をアルキル結合で連結した化合物をそれぞれ分子設計した。 オレキシン受容体作動薬およびAS400化試薬は市販の出発原料から、それぞれ8段階、11段階で合成した。続いて、薬物とAS400の連結反応について検討した。AS400はクマリニルアルコール構造を有することから、まず光延反応による連結を試みたが、望む縮合体は得られなかった。そこで、AS400の水酸基をハロゲン基へと変換し、求核置換反応による連結を試みた。種々の塩基、溶媒を用いて検討を行ったが、室温ではいずれも反応が進行せず、加熱条件ではAS400の分解が進行していた。一方で、市販のニトロベラトリルクロリドを用いた薬物の置換反応は順調に進行し、Nv基の導入が可能であった。以上の結果から、AS400の導入においては活性化体の安定性および立体障害の影響で反応が進行しづらくなっているものと考えられる。 Nv基を有する光ケージド薬物については合成が達成できたため、安定性および分光学特性について詳細に実験を行った。UV/Vis測定により吸収極大波長は348 nmに観測されたことから、続いて光照射下の薬物リリース能の検証を行った。光ケージド薬物の0.1 mM DMSO溶液に対し、365nmの光を30分照射したところ、HPLC収率56%で薬物が放出されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Nv基をケージング基とする光ケージド薬物の創製に成功し、実証実験に成功したものの、我々が開発した光ケージング基であるAS400の導入においては望む連結反応が進行する条件を見出すにはいたらなかった。AS400は極めて迅速な脱ケージ能を有するため、クマリニウムカチオン中間体が生成しやすくなっており、そのためハロゲン化体の安定性が低下していると考えられる。また、Nv基と比較すると立体障害が大きく、置換反応が進行しづらくなっているものとも考えられる。そのため、活性種の反応性制御の検討や、分子設計を見直し、スペーサーを導入してプロドラック化した分子の合成に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、AS400をケージング基とする光ケージド薬物の創製を最優先で検討する。ハロゲン化体などの活性化体の反応性制御については、ハロゲン化から置換反応までをフロー合成を活用して検討を行う予定である。また、AS400の分子の性質上どうしても現在の位置での連結が困難である場合も想定される。そのため分子設計を見直し、光反応後に切断可能なスペーサーを導入し、プロドラック化した分子を設計した。本分子の合成も並行して実施する。 合成した薬物は、各種分光学実験および薬理実験に供することで機能を評価し、十分な機能を有すると判断できる場合には、細胞やマウスを用いた実験へと順次移行する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度合成完了を予定していた化合物群のうち、AS400をケージング基とする薬物の連結反応が進行せず、本反応の最適化に多くの時間を割いていたため、細胞を用いた実験や分光機器を利用した測定が予定の半分以下となったために支出額が少なかった。次年度は残りの化合物の合成完了を行うために、フロー合成チップの購入に一部予算を使用し、早期の合成達成を目指す。また、合成完了後は予定している実験を行い、計画通りの予算執行と研究達成を目指す。
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Research Products
(3 results)