2020 Fiscal Year Research-status Report
植物根における栄養屈性に影響を与える環境及び遺伝要因の探索
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18K14365
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 清志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (20611297)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 栄養屈性 / 栄養応答 / イネ / 根 / 屈性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイネで新規に発見した、植物の根が栄養のある方向に向かって伸びる栄養屈性の解析である。 栄養屈性に影響を与える遺伝的要因を明らかにするために、主根で栄養屈性を示す系統について、栄養屈性の最中の主根根端からmRNAを抽出しトランスクリプトームデータを取得した。このデータを用いて栄養屈性に関与する遺伝子を逆遺伝学的に探索し、重力屈性や光屈性の制御に重要な遺伝子ファミリーのうちの一つが発現していることを突き止めた。この遺伝子の破壊系統をゲノム編集を用いて作出した(T1種子を取得)。結果的にはこの遺伝子のノックアウト系統は栄養屈性の反応性が向上することが分かり、本遺伝子をEnhanced Nutritropic Root 1(ENR1)と名付けた。ゲノム編集により変異を導入する標的配列を2か所に決めコンストラクトをそれぞれ作製し、フレームシフト変異によるノックアウト系統をそれぞれ作成した。ENR1はタンパク質相互作用ドメインを持ち、2種のコンストラクトはこのドメインの途中(enr1-1)あるいはドメインの後ろ(enr1-2)に変異を導入するよう設計した。これらの系統の栄養屈性の反応性を評価したところ、enr1-1のみ反応性が有意にかつ劇的に向上したことから、ENR1は栄養屈性を強く抑える機能を持っていることが示唆され、この機能は変異によって破壊されたタンパク質相互作用ドメインを介して行われていることが予想された。 さらに別の遺伝解析を行うために、栄養屈性の反応性が異なる親系統からなるF5集団約100系統を作出し、次世代シーケンシングによるMutMap解析を行った。これにより栄養屈性の反応性に関わる染色体領域を一気に絞り込むことに成功した。今後、F6世代でさらに遺伝子マッピングを進め、原因となるQTL或いは遺伝子の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栄養屈性に大きな影響を及ぼす外的環境要因と内的な遺伝要因両方の発見について昨年度と今年度において、屈性刺激以外の栄養条件、具体的な遺伝子、の同定という大きな成果を上げることができた。 栄養屈性を強く示す系統とほとんど示さない系統の交配集団を用いたアソシエーション解析は遅れたものの、F3世代で行う予定であった解析をF5で行えたことで、得られたデータの質としては非常に高いものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
栄養屈性を強く示す系統とほとんど示さない系統の交配集団は今年度F7種子が取得できるため、系統数が少ないもののファインマッピングまで進められると期待している。 さらに同定した栄養屈性関連遺伝子ENR1の発現や機能解析を引き続き継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で研究活動に大きな制限があったため。
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Research Products
(3 results)