2018 Fiscal Year Research-status Report
New insights into the diazotrophs in terrestrial environments
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18K14366
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 曜子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (80813237)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窒素固定 / 鉄還元菌 / 水田土壌 / メタゲノム解析 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画調書の3-1陸域生態系における窒素固定遺伝子のグローバル調査、3-2-1鉄還元菌の単離培養、窒素固定活性の測定、窒素固定遺伝子の同定、3-2-2土壌中における鉄還元菌の窒素固定能の解析を行った。 3-1において、公共データベースに登録されている世界各地の陸域土壌(極地、砂漠、熱帯雨林、農耕地など365地点)のメタゲノムデータの解析を行ったところ、水田土壌のみならず様々な環境土壌において鉄還元菌由来の窒素固定遺伝子が幅広く分布していることが示された。また、日本各地の水田、河川、畑、雑草地の計29地点の採取した土壌メタゲノム解析を行った。その結果、窒素固定遺伝子は水田や河川の底質においてその他の環境土壌よりも高頻度に検出された。また、検出された窒素固定遺伝子の大部分は鉄還元菌由来のものであった。これらのことから、鉄還元菌による窒素固定がグローバルな普遍性を有していることが示された。 3-2-1において、新規な鉄還元菌を多数分離することに成功した。Anaeromyxobacter属細菌は3株の新規株、Geobacter属細菌は4株の新規株を取得した。また、これら新規株のほとんどは窒素固定活性を示した。Anaeromyxobacter属細菌の窒素固定活性はこれまで全く報告されておらず、本研究において証明されたものが初めてである。 3-2-2において、培地中で窒素固定活性が確認されたAnaeromyxobacter属細菌を水田土壌マイクロコズムに摂種したところ、培地中と同様に窒素固定活性が確認された。このことから、実際の土壌においてもAnaeromyxobacter属細菌が窒素固定を行っていることが強く示唆された。 3-1における鉄還元菌のグローバルな分布, 3-2-1における鉄還元菌新種株記載、3-2-1, 3-2-2におけるAnaeromyxobacter属細菌の窒素固定活性に関する論文は現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3-1陸域生態系における窒素固定遺伝子のグローバル調査, 3-2鉄還元菌の単離培養、窒素固定活性の測定、窒素固定遺伝子の同定 (3-2-1. 3-2-2, 3-2-3)を行うことによって「鉄還元菌による窒素固定」を生態レベルから活性レベルまで多角的に実証することを目的としている。 本年度は、それらの項目のうち3-1, 3-2-1, 3-2-2を終えることができた。次年度は、3-2-3 鉄還元菌の窒素固定能の直接検証を、土壌サンプルに安定同位体でラベルした15N2を添加して行う。 この様に、本年度においてほとんどの項目を終えることができたため、進捗状況は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまでに得られた成果について論文を執筆すること、学会発表を行うことを中心に進める。 また、先述した様に、土壌サンプルに安定同位体でラベルした 15N2を添加して窒素固定活性を高め、取り込んだ微生物の塩基配列を解読することによって実際に鉄還元菌が土壌中で窒素固定を行っていることを直接的に実証する。さらに、IRMSを用いてその窒素固定量についても定量を行う。 これらのことから、鉄還元菌が土壌中における窒素固定のキープレーヤーであるか、土壌中の窒素肥沃度維持に貢献する相当量の窒素を固定しているかについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度は国際学会に参加するための旅費、論文の雑誌投稿料、同位体窒素を用いた解析を行うための費用といった出費が重なるため。
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