2018 Fiscal Year Research-status Report
抗生物質分解能を併せ持つAHLスカベンジャー細菌の機能解明
Project/Area Number |
18K14369
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
奈須野 恵理 宇都宮大学, 工学部, 助教 (80709329)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クォーラムセンシング / ペニシリンGアシラーゼ / 活性汚泥 / Roseomonas属細菌 / N-アシルホモセリンラクトン / βラクタム系抗生物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
一部の細菌は、シグナル分子の細胞内濃度が閾値に達したことを感知して病原性因子の生産やバイオフィルム形成などに関わる遺伝子の発現を集団で制御するクォーラムセンシング(QS)機構を有する。本研究では、活性汚泥から単離したRoseomonas sp. TAS13株の有するペニシリンGアシラーゼがグラム陰性細菌のシグナル分子であるアシル化ホモセリンラクトン(AHL)を加水分解する特性に着目した。TAS13株を足掛かりに、Roseomonas属細菌のβラクタム系抗生物質やAHLに対する分解活性や分解機構を明らかにし、自然界の微生物複合系における役割を考察するとともにQS機構の人為的な阻害技術への応用を目標とした。 平成30年度の研究計画のうち以下に述べる成果が得られた。Roseomonas sp. TAS13株に加えて Roseomonas aerilata とRoseomonas stagniの分離株を微生物株保存機関から入手し、それぞれの菌株からペニシリンGアシラーゼの遺伝子をクローニングして大量発現系を構築した。4種類のβラクタム系抗生物質に対するTAS13株、R. aerilata、R. stagni由来の各アシラーゼの分解活性を評価した結果、菌株によって活性が有意に異なった。また、各アシラーゼは、共通してアシル鎖がC10以上の長鎖AHLに対する分解活性が比較的高かった。 平成31年度は、これらのアシラーゼのアミノ酸配列から3D分子モデリングを実施し、基質結合部位とAHLまたはペニシリンGの結合に寄与する活性部位のアミノ酸残基予測から分解活性との関連を推定する。また、TAS13株のゲノムからペニシリンGアシラーゼの遺伝子を欠損させた変異株を作製し、AHLとβラクタム系抗生物質に対する分解活性を評価する。さらに、二次元電気泳動により野生株と変異株の全タンパク質発現量を比較する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画では、(1) Roseomonas属細菌3株由来のペニシリンGアシラーゼの遺伝子をクローニングし酵素の大量発現系を構築することと、(2)各アシラーゼのAHLとβラクタム系抗生物質に対する分解活性を評価することを目標とした。(1)に関してはデータベースに登録されている3株それぞれのゲノムDNA配列情報をもとに、遺伝子工学的手法によってアシラーゼ遺伝子をクローニングした。計画通りにマルトース結合タンパク質を融合させた各ペニシリンGアシラーゼの大量発現系を構築した。(2)については、アシル鎖長がC6~C12の各種合成AHLと、βラクタム系抗生物質(ペニシリンG、アンピシリン、カルベニシリン、セファドロキシル)を基質とし得るかどうかを試験し、TAS13株由来アシラーゼの分解活性が有意に高いことを明らかとした。また、ペニシリンGアシラーゼとAHLアシラーゼの分子系統解析結果と統合し、TAS13株由来のアシラーゼと同じ分岐群に属するR. stagniのアシラーゼの方が異なる分岐群に属するR. aerilataのアシラーゼよりもAHL分解活性が高く、Roseomonas属細菌由来のアシラーゼは多様性に富むことが示され当初の目標は概ね達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度は、平成30年度に大量発現系を構築したRoseomonas sp. TAS13株由来のペニシリンGアシラーゼについて、長鎖AHLとペニシリンGをそれぞれ基質とする分解反応を速度論的に解析し、どちらの基質の結合親和性がより高いかを明らかにする。また、AHL添加の有無でTAS13株をそれぞれ培養後、細胞から全RNAとタンパク質をそれぞれ抽出し次世代シーケンサーによりRNA解析を実施するとともに、発現量の異なるタンパク質を二次元電気泳動により同定する。さらに、TAS13株のゲノムDNAからペニシリンGアシラーゼ遺伝子を欠損させた変異株を作製し、野生株とタンパク質発現パターンを比較して本アシラーゼがTAS13株の代謝に与える影響を解析する予定である。これらのデータを統合してRoseomonas属細菌のAHL分解機構を明らかにし、自然界の微生物複合系におけるRoseomonas属細菌の役割を考察する。最終的には、TAS13株のAHL分解活性を活かしたAHLスカベンジャー(清掃者)への応用も検討する。
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Causes of Carryover |
参加予定の学術集会が開催中止となったため、旅費が不要であった。
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