2018 Fiscal Year Research-status Report
合成生物学ツールとしての酵母オペロン型遺伝子発現系の「再開発」
Project/Area Number |
18K14374
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
冨永 将大 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 学術研究員 (50761409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 遺伝子発現 / 翻訳 / リボソーム / 進化工学 / IRES |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 通常一つのmRNAから一つの遺伝子しか発現しない酵母において, 一つの mRNAから複数の遺伝子を効率よく発現できる"オペロン型"の遺伝子発現系を樹立することである。そのためには,人工的な翻訳促進機構を新たに構築するか (項目1),IRESと呼ばれる既知の翻訳促進配列について,酵母内での活性を強化する必要がある (項目2)。 初年度であるH30年度は,まず哺乳細胞で実施例のある人工的な翻訳促進機構を酵母内で構築し,複数の遺伝子を効率よく発現できるか検証した(項目1)。具体的には,翻訳をトリガーするいくつかの翻訳開始因子(酵母由来)をRNA結合タンパク質に融合して,これが狙ったmRNAへ結合することを利用して翻訳開始因子をレポータ遺伝子上流へと誘導することで,レポータ遺伝子が翻訳される仕組みを構築した。しかしながらこの方法では,酵母において高効率な遺伝子発現が可能なオペロン型遺伝子発現系を確立することはできなかった。 一方,IRES活性の飛躍的な向上を目指した進化実験(項目2)には,IRES活性のハイスループットな評価系が必要である。これまでは,IRESに依らない遺伝子発現による偽陽性を除くために,一つ一つの候補配列について,その潜在的なプロモータ活性やスプライシングの有無をin vitroで解析する工程が必要であり,このことがスループットを制限していた。われわれは,酵母内IRES活性のハイスループットなin vivo評価系を確立し,この手法を用いて,既存のIRESを再評価し,酵母内で高い活性を示すいくつかのIRESを見出すことができた。次年度は,いよいよ,この手法を用いたIRES活性の進化工学を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[項目1] まずIRESを用いない,人工的な翻訳促進機構の構築を試みたが,高効率な遺伝子発現が可能なオペロン型遺伝子発現系の樹立には至らなかった。そのため,項目2で述べるIRES活性の進化工学によって,高効率で遺伝子を発現できる酵母のオペロン型遺伝子発現系を構築することを目指した。 [項目2] IRES活性のスクリーニング系の確立を行った。この手法を用いて,酵母内で活性を示すことが知られているIRESやそれらのキメラについてその酵母内IRES活性を再評価したところ,高い活性を示す数種のIRESを見出すことができ,IRES活性の向上を目指した進化工学の準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度までに本研究の完遂に必要な個別の技術はほぼすべて揃えることができた。次年度は,全ての要素を集結し,いよいよIRES活性の進化工学実験を行う。具体的には,まず(1) IRES配列にランダム変異を導入することでIRESの変異体ライブラリを作製する。次に,(2) 確立したIRES活性のスクリーニング/セレクション法によって,より活性の高いIRES変異体を取得する。最後に,(3) それらの遺伝型および表現型を解析する。出発点として,予備スクリーニングで最も高いIRES活性を示したPlautia stali intestine virus由来のIRESと全く活性を示さなかったSolenopsis invicta virus1由来のIRESとの二つを用いる予定である。
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Causes of Carryover |
[次年度使用額が生じた理由] 主として,増員予定であった技術補佐員が予定通りに雇用できなかったため,繰越が生じた。
[次年度使用額の使用計画] 主として、持ち越し分と次年度分を合わせた予算は、本研究に専心する研究員の人件費および消耗品費として使用する。
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