2020 Fiscal Year Research-status Report
LLB Phage: Novel approach to eliminate food poisoning bacteria
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18K14378
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
益田 時光 九州大学, 農学研究院, 助教 (90778060)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / リーダレスバクテリオシン / CRISPR-Cas / 食中毒細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、リーダレスバクテリオシン(LLB)を産生するバクテリオファージ(ファージ)、LLBファージを構築し、食中毒細菌の制御における新しい手法を創出することを目的としている。また、ファージの遺伝子改変のために、CRISPR-Casシステムを用いた新たな組み換えプラットフォームについても検討を行なっている。 2019年度、大腸菌を宿主とするLLBファージ、lnqQ-T7ファージの作成に成功しており、2020年度はこちらを用いてオリジナルのT7ファージとの特性の違いを評価した。その結果、lnqQ-T7ファージの方が優れた抗菌活性を有し、耐性菌の出現も抑制した。このような成果を論文としてmBio等の雑誌に近日中に投稿予定である。 また、2020年度より食中毒菌である大腸菌O157-H7株を宿主とするファージECP52のLLBファージ化も進めており、こちらは、CRISPR-Cas9を利用したファージゲノム編集プラットフォームがほぼ完成した。 一方、黄色ブドウ球菌を標的としたLLBファージの構築については、当研究室で単離したファージ、PSARa株に、CRISPR-Cas10システムによってLLB構造遺伝子を導入した、lnqQ-PSARaの構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に、当初予定していたCRIPSR-Cas3を使ったアプローチから、trxA遺伝子依存的なファージゲノム編集技術の利用に移行することで、モデル生物である大腸菌とT7ファージを用いて最初のLLBファージであるlnqQ-T7ファージの構築に成功した。この新しいファージの性質について2020年度に解析を行い、我々が期待していた通り、オリジナルのT7ファージに比べて、高い溶菌活性、さらに宿主菌ではないグラム陽性細菌に対しても抗菌効果を示すことが明らかとなり、本研究の第1報目となる論文の執筆を完了し、現在投稿の準備を進めている。 モデル株だけでなく、大腸菌O157-H7株を標的としたファージECP52株についてもCRISPR-Cas9システムを用いてlnqQ構造遺伝子の導入を目指しており、現在までに大腸菌宿主にてCRISPR-Cas9を発現させ、ファージのスクリーニングが可能であることが確認できている。 一方、黄色ブドウ球菌ファージについては、CRISPR-Cas10を用いたゲノム編集システムを構築し、lnqQ-PSARa株の作成にも成功した。現在はこちらのファージの特性の検討やCRISPR-Cas10システムの改善等を進めながら、新たな黄色ブドウ球菌ファージPSARbなどを用いて実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
lnqQ-T7ファージについては、構造遺伝子の導入箇所や導入する構造遺伝子の数などの検討を行い、抗菌力の向上を目指す。また、病原性大腸菌O157-H7株を標的としたLLBファージの構築については、CRISPR-Cas9システムを用いて、LLB構造遺伝子の導入を行っていく。 黄色ブドウ球菌については、現在、PSARaとPSARbという2株のファージに、CRISPR-Cas10システムにを利用してLLB構造遺伝子の導入を試みているが、両株共に溶原ファージという特徴を持つ。このファージの溶原かについては実際の応用の場において好ましくないことが多い。そのため、CRISPR-Casシステムを利用して、LLB構造遺伝子の導入を試みると同時に、ファージの溶原化に関わる遺伝子の除去も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍の影響で国内外の主要な学会がことごとく中止もしくはオンライン開催になるなどしたため、本来予定していた学会発表の機会がなくなってしまった。そのため、旅費等で計上していたものに余剰が生じたため次年度使用額が生じた。2021年度については、6月にオンライン開催予定のWORLD MICROBE FORUMなどに参加、さらに複数の論文投稿を予定しているため、実験の消耗品にかかる費用だけでなく、上述のような用途で資金を使用していく予定である。
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