2020 Fiscal Year Research-status Report
耐熱性色素依存性D-乳酸脱水素酵素の機能・構造解析とバイオセンサー素子への応用
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18K14394
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
林 順司 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 助教 (20802101)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酵素工学 / 酵素 / 超好熱菌 / 構造生物学 / FAD / 補酵素特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、立体構造情報を基にバイオセンサー素子として最適な色素依存性D-乳酸脱水素酵素(Dye-DLDH)を開発することである。本研究はD-乳酸の新規測定法開発において重要な役割を果たすと考えられる。2020年度は本酵素のFAD結合型構造を取得するため、FAD結合型構造を得るための変異導入および本酵素の完全な立体構造の取得を目指して研究を展開した。 本酵素のN末端にはFAD依存性酵素に通常見られるGxGxxGモチーフが欠落していた。そこで既知酵素(putative dehydrogenase, PDBID:3pm9)との比較により、推定される部位にこのモチーフを導入した変異酵素にはFADは結合せず、本モチーフの導入のみがFAD結合に決定的な影響を与えないことが判明した(日本農芸化学会中四国支部第58回講演会発表)。また結晶化条件の探索を行い、新たな結晶化条件を見出すに至った。X線回折実験の結果、分解能2.2Å、空間群P6122で構造決定に成功した。しかし、本条件においても構造中にFADの電子密度は得られなかった。その一方で、不明であったFAD結合部位と予想される部位の立体構造が判明した。既知酵素のFAD結合部位に相当する箇所が本酵素ではループ構造が伸長することで、FAD結合部位が覆いかぶさることが判明した。このループ構造の違いがFAD結合に関与している可能性が示唆された。また、本酵素の触媒残基と推定されるアミノ酸残基を立体構造より新たに見出した。これら残基は既知酵素にも保存されており、既知酵素ではFADのイソアロキサジン環周辺に位置していた。 今後は、これら残基を変異させて触媒活性を停止させた変異酵素を作製する。変異酵素とFADとの共結晶を作製し、X線結晶構造解析および詳細な酵素化学的諸性質の解明を行うことで、FAD結合性に関与する構造の特定および反応機構を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに、当初の目的である耐熱性酵素を固定化させたバイオセンサーの開発、および酵素の立体構造解析に成功しており、研究は順調に進行している。一方で、立体構造解析は断片的な情報の取得に止まっており、肝心の反応・電子受容体特異性の決定に関与する構造の特定に至っていないことから、総合的評価として概ね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で見出した本酵素の触媒残基と推定される部位に対し、部位特異的変異を導入する。触媒活性を停止させた変異酵素を用いてFADとの共結晶を作製する。また変異酵素のX線結晶構造解析および酵素化学的諸性質を解明し、FAD結合性に関与する構造の特定および反応機構の解明を目指す。 上記を通じて、バイオセンサー用酵素として機能向上に関する構造情報を取得する。
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Causes of Carryover |
当該年度ではタンパク質結晶構造解析を中心に展開し、タンパク質精製用カラム(約100,000円)やタンパク質結晶化用低温インキュベータ(約70,000円)、結晶撮影用カメラ(約70,000円)等を購入した。遺伝子実験用試薬購入費としてDNAポリメラーゼやDNA精製キットなど約60,000円を使用した。学外実験のため旅費・交通費として50,000円が生じた。また、大腸菌培養用シェーカーが故障・修繕不能のためシェーカーの新規購入(約50,000円)、分光光度計の光源交換費(約30,000円)など、機器老朽化による修繕費が発生した。一方、COVID-19により、参加予定の学会がオンライン化または中止となったため、当初計画していた旅費が一切生じず、未使用金(30,152円)が生じた。 これまでに耐熱性酵素の開発およびセンサー開発に成功しており当初の目的は概ね達成している。一方、酵素の構造情報は着実に前進しているものの、現在までに断片的な構造情報しか得られていない。次年度は、当該申請研究の最終年度であり、バイオセンサー用酵素の人工的開発に向け、研究費を主にタンパク質の構造解析用試薬・消耗品・機器購入費(約400,000円)として使用する。その他、学外実験費(50,000円)、データ解析費および論文投稿費(50,000円)にも充てることで研究の加速・円滑化を図り、研究成果を国際論文として発信する。
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Research Products
(5 results)