2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K14397
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
網干 貴子 山形大学, 農学部, 助教 (20746705)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食害応答 / イネ / QTL / ジャスモン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネでは病原菌感染に対して、多様なジテルペン化合物やサクラネチンがファイトアレキシンとして増加するが、病原菌に対する応答に比べると、食害に対する化学的応答はあまり明らかとなっていない。本年度は、アワヨトウなどの食害により葉で蓄積が誘導されることが明らかとなったイソペンチルアミンの生合成について詳細に調べた。 イネ幼苗に、様々な植物ホルモン処理を施し、2日後に葉を50%メタノール水溶液で抽出した。抽出液に6-aminoquinolyl-N-hydroxysuccinimidylcarbamateを加えて誘導体後、イソペンチルアミンの量をLC/MSで測定した。ジャスモン酸を処理したイネではイソペンチルアミンが増加したのに対し、アブシジン酸、サリチル酸、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸を処理したイネでは増加しなかった。イネ葉では傷害によりジャスモン酸の増加を経て、イソペンチルアミンが増加すると考えられた。 また、安定同位体標識されたアミノ酸をイネに注射し、イソペンチルアミンの生合成反応を検討した。13C標識ロイシンをイネ幼苗に注射後に、ジャスモン酸処理し、葉のイソペンチルアミンを分析した。イソペンチルアミンは、誘導体化処理によりm/z 258 [M+H]+ (ESI-positive) で検出されるが、13C標識ロイシンを注射したイネではm/z 258に対するm/z 259のイオンの相対強度が10%以上増加した。本結果から、13Cで標識されたイソペンチルアミンの生成が示唆され、ロイシンはイソペンチルアミンの前駆体と考えられた。 さらに、イソペンチルアミンをもつ品種ともたない品種の染色体断片置換系統や組換え自殖系統の分析結果から、生合成に関与する遺伝子の存在領域の絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はイソペンチルアミンの生合成を誘導する植物ホルモンや、前駆体について明らかにすることができた。植物ではプトレシンなどポリアミンがストレス応答に関与しているとの報告があるが、イソペンチルアミンについての報告は初めてである。 また、イソペンチルアミンの生合成に関する情報や組換え自殖系統などの分析から、生合成に関与する遺伝子の存在領域を絞ることができた。 以上のことから、本課題については順調に研究が進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度絞り込んだ生合成に関与する遺伝子の存在領域から、発現パターンなどから候補遺伝子をさらに絞る。生合成遺伝子をクローニング、大腸菌で発現させ、酵素活性を確認する予定である。また、今年度はウンカに対する生物試験方法の確立も行ったので、これらを用いてイソペンチルアミンの生理活性の評価を行う予定である。これらの研究により、イネにおけるイソペンチルアミンの役割解明の大きなヒントが得られると期待される。
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Causes of Carryover |
イソペンチルアミンの生合成遺伝子の絞り込みのために予定していた遺伝子の発現解析が、共同研究者の協力のおかげで不要となったため。この分の予算は、次年度の候補遺伝子の機能解析に必要な試薬の購入に使う予定である。また、次年度の遺伝子実験に旅費が必要となったため、今年度の旅費を削減し、次年度に持ち越すこととした。
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Research Products
(5 results)